量子コンピュータが得意なことは?

量子コンピュータが得意なことは?

高速な計算が可能な量子コンピュータ

「量子コンピュータ」は、量子力学をベースにした最新の計算のパラダイム(規範的な考え方)です。従来のコンピュータの基本は、「0」か「1」のどちらかの値を取る「ビット」という概念です。一方、量子コンピュータの量子ビットは、「0」と「1」の両方の値を同時に取ることができます。「0」に対する計算と「1」に対する計算を並列に行えるため、従来のコンピュータに比べてはるかに高い計算能力を持ちます。

素因数分解を瞬時に行える

ただし、量子コンピュータの並列処理には幾つかの制約があり、どんな計算でも速く処理できるわけではありません。高速に計算できる対象を見つけることは簡単ではなく、現在の重要な研究テーマになっています。既にわかっているものの一つは素因数分解です。1994年に量子コンピュータによって素因数分解を瞬時に行う方法が発見され、世界に大きなインパクトを与えました。なぜなら、現在使われている暗号化方式は「大きな数の素因数分解に時間がかかる」ことを前提としたものなので、量子コンピュータが実現すると、この前提が崩れてしまうからです。既にアメリカでは量子コンピュータでもなかなか解けない新たな暗号化方式が標準化されようとしています。

数学で量子コンピュータの実力を証明

量子コンピュータは量子力学に基づく計算パラダイムなので、原理的に量子力学の計算をとても速く行うことができるはずです。それを数学的に厳密に証明する取り組みも進んでおり、ある条件の下では、古典的なコンピュータよりも量子コンピュータの方が化学反応の計算を速く行えることが証明されています。
量子コンピュータのハードウェアは、とても小さなものが実現されたばかりです。将来の実用化に向けて、世界中の数学者が活用方法の研究に取り組み、日々新たな発見が報告されています。教科書のない世界で、数学という道具により、未来の可能性の扉の鍵が開かれていくのです。

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名古屋大学 理学部 数理学科 教授 ルガル フランソワ 先生

名古屋大学 理学部 数理学科 教授 ルガル フランソワ 先生

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数学、情報学

メッセージ

理学研究者の役割は、自然界の真理を追究し、世界に発信できるような研究成果を生み出すことであり、大学はそれが実現できる場です。本学理学部は、さまざまな側面から自然界の謎を解き明かす学際的な学部です。私自身も「量子計算」という、数理から物理まで多岐にわたる研究分野を専門としており、その環境の魅力を日々実感しています。私たちの仲間に加わり、知的好奇心やチャレンジ精神を生かして、世界クラスの成果をどんどん発信していってほしいです。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。