流行への欲望はどうやって形成されるのか~ファッション文化研究~
服飾の変化を追うだけでは見えてこない
女性服の売り場が男性服に比べ圧倒的に広いのはなぜでしょうか。実は、近代以前の西洋の王侯貴族は、男性の方が着飾っていました。では、どのような歴史を経て、現代のような状況に至ったのでしょう。この答えは、服飾の様式の変化を追うだけでは見えてきません。各時代の社会において服飾がどのような役割を果たしてきたのか、どのように流行は伝えられ、人々の欲望をかきたててきたのか、その歴史を文化的・社会的背景から見ていく必要があります。
米国発のファッション雑誌の影響力
ファッションのつくり手にとって、今でもパリがクリエイティビティの中心地です。一方、彼らの仕事を「伝える」という側面で強い影響力を持つのは、「VOGUE」や「Harper's BAZAAR」など米国のファッション雑誌なのです。100年以上の歴史を持つ両誌が取り上げるファッションは、今も世界から注目され、流行をつくり、経済を活性化させています。つまり、ファッションへの欲望を駆り立てる重要な役割を担っていることから、雑誌のようなメディアが研究対象として重視されています。
日本発のブランドも芸術的価値を獲得
また、ニューヨークのメトロポリタン美術館は、服飾部門を持つことで有名です。同館が企画してきた展覧会は、ファッションの「芸術的な価値」を高め、世界各地のファッション展の流行にも大きな影響を与えてきました。特に2017年に開催されたファッション展、日本人デザイナー・川久保玲による日本発のブランド、コム デ ギャルソンの特別展は、現役デザイナーを単独で取り上げた二度目の展覧会でもあり、世界的な関心が寄せられました。パリを中心とするファッションの世界において、日本のブランドも存在感を示しています。
眼前のファッションを「当たり前」「常識」としてとらえるのではなく、過去から学び、「今を見直すヒント」と「現代の特性の発見」につなげていくことが、ファッション文化研究の大切な視点なのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 発達コミュニティ学科 准教授 平芳 裕子 先生
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