大人にとって当たり前のことは子どもにとっても当たり前?

大人にとって当たり前のことは子どもにとっても当たり前?

子どもの願いや悩みを理解する

子どもが何を考え、何に困っているのかを知らないと、乳幼児期や障がいのある子どもたちに適切な支援は行えません。子どもの発達を研究するうえで大切なのは、「子どもの願いや悩みを理解すること」です。ときに子どもは、大人には理解できない行動や問題を起こすことがあります。しかし、そこには「子どもの願い(発達要求)」が隠れていることを見逃してはなりません。なぜそのような行動を起こすのかを探っていくと、「こうしたいけれど上手にできない」など、心や体の発達と子どもの心理・想いが複雑に絡み合った理由があるのです。それらを理解できれば、子どもに対して無理強いしたり、頭ごなしにしかるのとは違う別の接し方が見えてくるはずです。

大人の当たり前を問い直す

また、子どもを通して「大人が当たり前に思っていることを問い直す」ことができます。例えば、小学2年生の女の子に時計の文字盤を見せながら「今は2時ですが、あと1時間たてば何時になりますか?」と尋ねたところ、「1時」に時計の針を動かしたのでした。この女の子を「時間の流れが理解できていない」と決めつけてしまうことは簡単ですが、なぜこのように答えたのでしょう。
大人は「あと2時間で終電」といえば、時間的に未来のことだと考えます。一方、「あと戻りする」といえば、空間的(動作)に後ろのことだと考えます。大人は“あと”の意味を二通り知っていて、時間的・空間的に使い分けをしているのです。しかし、女の子は、“あと”は後ろを指す言葉としか知らなかったので、「1時」と答えたのです。

子どもを見ると大人も見える

子どもの間違いは、私たちが常識だと思っていることを見つめ直す絶好のタイミングなのです。子どもを深く見つめることは、適切な支援や教育を行う際に不可欠ですし、同時に、大人のありかたを考え直すことができる機会だとも言えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 国際人間科学部 子ども教育学科 教授 木下 孝司 先生

神戸大学 国際人間科学部 子ども教育学科 教授 木下 孝司 先生

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発達心理学

メッセージ

大学の学びは、自分で問いを発して、いろいろな方法を使って、それの答えを導きだす力を育むことをめざしています。ですから、高校生のうちから世の中を見て、自分自身で問いかけ、考えていく練習をしておきましょう。
また、子どもへの支援は、多くの仲間でお互いがお互いをサポートしながら行っていく仕事です。決して一人ではできません。熱い心、冷静な頭、そして多くの人とつながる手をしっかり養い、いろいろな立場から子どもの発達を保障する人になっていってほしいと思います。

先生への質問

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神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
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