59被服学

被服学は、衣服のデザインや製作、素材となる繊維の開発や生産、衣服の流通・消費、服飾文化や歴史といった、衣服と生活の関わりを、科学的・文化的に研究する学問です。被服学のかつての主目的は「洋服や和服の縫製技術の修得」でしたが、現在は「快適な生活やライフスタイルのための衣服の創造」に移行しています。
衣服の歴史や文化を学ぶ「服飾美学・服飾史」や、被服の流通や消費に関するマーケティングなどを学ぶ文系的要素と、衣服を創作するための素材の研究、防炎・防臭・防水など加工技術の研究、被服製作や縫製技術、コンピュータでの設計・製図を学ぶ理系的要素が絡み合っているのが特徴です。色彩学、テキスタイル(織物・布地)デザイン、人間工学、繊維や染色の化学工業技術などとも深い関わりがあります。
アパレル関係、繊維メーカー、流通・サービス業などへ就職する人が大半です。デザイナー、パタンナーといったクリエイターや、商品企画・商品管理、品質管理に関わりながら専門的な能力を発揮する人、家庭科教員になる人もいます。
お茶の水女子大学 生活科学部 人間生活学科 准教授 難波 知子 先生
日本では多くの中学校・高等学校に制服があります。特に女子高校生の制服は、海外でも人気になっているようです。日本人の学生生活に深く根を下ろし、海外でも注目されている日本の制服は、どのように始まり、どんな道筋をたどってきたのでしょうか。
日本で学校の制服が導入されたのは明治時代で、着物から洋服への移行時期と重なります。当時、洋服は少数の裕福な人しか着られませんでした。教育界ではまず、学習院の男子生徒や帝国大学の男子大学生が揃いの洋服を着始めました。軍服にも採用された機能的な詰襟のデザインが選ばれ、次第に男子の「学生服」として定着していきます。大正時代の終わり頃には、学生服が大量に生産され、小学校の男子児童にも着用されました。
同様に、女学生の制服として明治30年代から普及した「はかま」は、高等女学校に通う女学生が動きやすさなどから着用し始め、それが評判になって、「女子学生=はかま」という社会的な認知にもつながり、「制服」として普及したと考えられています。
「学生服」も「はかま」も、当時は個々の学校において、あくまで着用が「推奨」とされていることが多かったのですが、興味深いのは、当時から今に至るまで文部省(現・文部科学省)が着用を義務付けているわけではないという点です。それにもかかわらず、学生服やはかまは全国に普及し、今日まで続く「学校制服」の慣習につながります。
そこには、「自分だけ着ないのは恥ずかしい」という暗黙の強制力が働いた可能性があります。しかし、それだけでは普及と継続は難しいでしょう。積極的に制服を受け入れる理由があったはずです。例えば、制服を着ることで生まれるアイデンティティ、制服という枠組みの中で発揮される個性、学生という身分の承認などが考えられます。文化とは、さまざまな要素が複雑に絡み合って育まれるということを、学校の制服の歴史は教えてくれるのです。
杉野服飾大学 服飾学部 服飾学科 教授 瀬古 徹 先生
絵画や彫刻などで人間の体を写実的に表現するために、骨のつながり方や肉の付き方など、人体の構造を解剖学的に研究する学問分野を「美術解剖学」と言います。太っている人と痩せている人では、体の表面に注目すれば、まったく異なる外見をしていますが、美術解剖学的な視点で見ると、共通している部分があります。例えば、両胸の間の胸骨の位置や頭部の頬骨より上の位置には、脂肪や筋肉がついていません。どのような体形の人であれ、人体の構造がそのようにできているからです。
美術解剖学は美術における理論のひとつですが、その知識は服飾の分野にも応用できます。美術では人体そのものが作品のモチーフになりますが、服飾では、人体は作品の支持体となります。支持体とは、絵画におけるキャンバスのように、作品を成立させるための土台のことです。
服の形は、人体の構造を意識するか否かで異なった発想のデザインになります。例えば腕は体の前方では比較的自由に動かすことができますが、後方では、限られた動きしかできません。それをどこまで意識するかによって、袖をつける位置や縫製の仕方、肩周りのデザインなどが変わってきます。もちろん、人体の構造を意識しているだけで、デザイン的に優れているわけではありませんが、スポーツウェアなど機能面が重視される服をデザインする場合などには、こうした解剖学的な視点が重要です。
体のラインを強調する服や、反対に体のラインを隠す服など、世の中にはさまざまな形の服があります。しかし、その支持体が人体である以上、服飾のデザインと人体の構造上の特性は切っても切り離せない関係にあると言えます。それは、デザインで機能性を重視しようと、芸術性を重視しようと同じことです。服が人間によって着られるものである以上、美術解剖学の知識は、服飾のデザインを考える上での大きなヒントになるのです。
多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 テキスタイルデザイン専攻 教授 髙橋 正 先生
繊維や生地は歴史的に防寒や安全のための機能だけでなく、美しい模様で生活に潤いを与える役割もあり、ファッションやインテリアに使われてきました。「テキスタイルデザイン」とは、かつては染めや織りに関するものでしたが、産業の機械化が進み、編む、プリントするなど領域の広がりが出てきました。
最近では繊維自体が機能を持つことも増えました。ユニクロのヒートテックのような保温性の高いものや、遮光性のあるカーテン生地などが代表的です。それらの生地にデザインを加えることは人目を引くだけでなく、生活の中で機能を果たす役割も持つようになっています。
テキスタイルデザインは生地についてあらゆる知識が必要です。繊維や糸を作るところから、織物の柄や色彩計画、プリントの版による製法、色の知識、また最近ではコンピュータの知識も必須です。
特徴として、手で繊維や布を触ってデザインを考えるというところがあります。手で触った感触をデザインとして頭の中で言葉や形にイメージ化していくのです。また、プリントにおけるパターンデザインの特徴は繰り返しで、単なる絵ではなくそれが醸し出す空気(atmosphere)です。どのような用途に使われるのか空気を読み取ってデザインするセンスや知識も必要です。
例えばカーテンのデザインは、そのデザインだけで終わりません。空間全体の中でどうあるべきか、建築全体でどう考えるか、窓の外の自然との関わりはどうかなど、いろいろな広がりが考えられます。生活の中に浸透している分、生活が変わるとテキスタイルデザインも変わります。最近のIT化を反映して、通電性の差がある繊維を混合して、電極を付けて音楽をプログラミングした布シンセサイザーを作るというような、他分野への広がりも進行中です。一方、バナナ繊維を使用して環境に優しい繊維製品(紙、糸、布)の開発なども発展途上国へのデザイン支援という形で社会に貢献しています。
文化学園大学 服装学部 ファッションクリエイション学科 教授 高村 是州 先生
時代とともに変化するファッションは、社会を映す鏡とも言われます。社会に生きる私たちは出会った相手が身につけているものからその人の内面を想像します。最初の段階でファッションをうまく活用すれば、互いをより円滑に理解できます。ファッションとコミュニケーションはある意味、ほぼイコールな存在と考えてもいいでしょう。
フランスの著名なファッションデザイナーのココ・シャネルはかつて、「着る物を選ぶということは、自分の生き方を選ぶことだ」と言いました。ファッションは自分自身の内面や生き方を表現する上で、大切な役割を果たしているのです。
ファッションについて理解や知識を深めていくには、まず、友だちや身近な人の私服をよく観察してみるのがいい方法です。お互いに気づいたり感じたりしたことを話し合ってみましょう。すると、相手の個性的な一面を知ったり、逆に相手からのアドバイスで自分自身を見直すきっかけを得たりできます。身近な人とのファッションについてのコミュニケーションは、世の中の流行を知ったり、自分らしさを表現したりする方法など、たくさんのことを気づかせてくれるでしょう。
ファッションについて勉強すると、服やアクセサリーをデザインしたり作る仕事だけでなく、例えばアニメやゲームに登場するキャラクターのデザインや、そこから広がるコスプレなど、ポップカルチャーの分野でも役立つ知識とセンスを養うことができます。衣生活をよりよくするための研究もできます。そもそもファッションは、政治、経済、文化、歴史など、社会のあらゆる場面に密接に関わっている存在です。ファッションを学ぶことは、人間と社会のあり方そのものについて理解するための大きなヒントにもなるのです。
好きな服飾について学べるし、楽しそうだったから。
舞台衣装の仕事に携わりたいため、服飾に関する専門教育をおこなう単科大学てある点に魅力を感じました。
これから習得したい技術や内容が勉強できるから
やりたいことができる環境であり、カリキュラムが魅力的だから。
ファッションを根本としたカリキュラムがある
実際に会社で使われているミシンがあることや、ショーができるホールがあるところ。
全ての分野を総合的に学習してから専門分野へいけるから選択肢が多い
大学でファッションデザインを学べる
送料とも無料
発送予定日: 明日発送発送日から3〜5日後にお届け
お茶の水女子大学 生活科学部
被服について学びたかったので、生活科がある国公立大学を志望しました。
複数のプログラムを履修できる制度があるなど、幅広い学問を習得できる環境があるから。