自分らしさは不自由? 社会学が考えるファッションとは

自分らしさは不自由? 社会学が考えるファッションとは

ファッションの常識

あなたは、自分の服装は自らの意思で自由に選んでいると思いますか? 社会学という学問では、あらゆる常識、制度、文化は社会によって作り出されると考えます。ファッションにおいても、個人の意識や行動を縛る常識や制度があると考えます。例えば、私たちは社会で育つ過程で「男らしいファッション、女らしいファッションがある」ということをいつの間にか刷り込まれており、服を選ぶ際にも「男らしさ・女らしさ」といったルールから影響を受けていると考えるのです。

自分らしさの呪縛

しかし、近年では性別にこだわらない価値観が広がっています。ファッションにおいてもユニセックスなファッションが脚光を浴び、メンズライクなファッションを好む女性も増えてきました。以前よりも「自分らしい」ファッションを選べるようになっていますが、こうした「自分らしさ」もまた、個人の意識や行動を縛ることがあります。例えば近年は自分の骨格や肌の色を細かく診断し、それに似合うファッションやメイクを提案してくれるサービスが増えています。また、SNSでも自分と近いファッション観をもつ人と簡単につながれるようになりました。こうした自分向けにカスタマイズされたような世界はとても便利な反面、他の選択肢に目を向ける機会が奪われることにもつながります。

都市空間の役割

こうした「自分らしさの檻(おり)」から抜け出すには、都市空間に出るのが一つの方法です。同じ系統のファッションばかりが目に入ってくるSNSとは異なり、都市には、例えばギャルや地雷系といった異なる系統のファッションが同じ空間に存在しています。そこで自分とは異質なファッションに偶然出会うことで、新たな発見があるかもしれません。また、都市の非日常的な空間で、あるキャラクターに変身する「コスプレ」も、「自分らしさ」から抜け出す手段です。
このように、ジェンダーや自分らしさ、メディア、都市空間といった幅広い視点からファッションについて考えられる点が、社会学という学問の特徴なのです。

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奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授 松岡 慧祐 先生

奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授 松岡 慧祐 先生

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社会学、文化社会学

メッセージ

確かな信念をもって生きることは大切ですが、「こうでなければならない」という考え方は時に生きづらさにつながり、他者との対立を生むこともあります。より変化が激しく、複雑になりつつある世界の中で、自分以外の多様な人たちの考え方を理解するためには「柔軟な考え方」が必要です。私が専門とする社会学は「こうでなければならない」という常識を疑う学問です。といってもすべての常識を否定するのではなく、守るべき常識と、そうではない常識を見分ける柔軟な視点も、社会学を学ぶことで養われます。

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