思想家・ボードリヤールの考えからひも解く現代の「消費」

「消費」には2つの種類がある
フランスの有名な思想家に、ジャン・ボードリヤールという人がいます。あの「無印良品」や「PARCO」などを作った実業家・堤清二にも影響を与えました。ボードリヤールは「消費」とは「モノの価値をすり減らすこと」を意味し、さらに2つの「消費」が存在するという説を唱えました。1つ目は「使用価値の消費」で、「服や靴を実際に何度も身につけることでやがて着られなくなる」というように使用価値がゼロになることです。そしてボードリヤールが注目したのが2つ目の「機能価値の消費」です。これは、自分を見てもらう・アピールするためにアイテムを「記号」として利用するという消費の仕方です。
アイテムで理想の自分を演出
アイテムを「記号」としてとらえる考え方は現代日本において浸透しています。例えば、「高級車に乗ることでラグジュアリーな自分を演出する」「キュートな服を着ることでカワイイ自分を演出する」などのケースがあります。さらに1点だけでは伝わらないので、いくつものアイテムを組み合わせて「コーディネート」するという手法もあります。しかし、その記号はいつまでも通用するものではありません。記号は流行に合わせて「ルシクラージュ(更新)」されていきます。私たち消費者は、すぐに更新される記号を追い求め、商品を買ったり情報を探したりすることが当たり前となっています。
自然も「商品化」される現代
現代では「安全な水」としてのミネラルウォーター、「健康」のためのサプリメントなど、自然や目に見えない事柄すらも商品化されています。消費者にとっては便利ですし、生産者側からすれば良いビジネスにつながりますが、それは存在しない「まぼろし」の中で生きていくことと近いかもしれません。どこにいてもSNSや広告が目に入る社会において消費から抜けだすのは難しいことです。それだけに、一度立ち止まって、本当に必要な消費なのかを疑ってみることが大切なのです。
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