ナノ結晶を応用して製品の性能を高めるハイブリッド技術
特殊な方法でシリカを高分子(ポリマー)で包む
小さく硬く安価なシリカという物質のナノ粒子を、特殊な方法を使って高分子(ポリマー)でくるむと、表面の改質が起き、粒子にポリマーが強く結びついて、熱をかけても溶媒につけてもはがれなくなります。粒子にさまざまなポリマーをつける方法は今までもありましたが、この特殊な方法を使うと、粒子とポリマーが面と面でくっつき、一気にしっかりと結びつきます。こうすることで電極は強度が高くなり、また、コストを抑えられるのです。
さらに性能の高いものにするため、粒子につけるポリマーの合成方法や、ポリマーで覆われた粒子を膜にする方法が考えられており、ポリマーとバインダー(結着剤)と呼ばれる材料の配合比や、どの溶媒を選ぶかなどが検討されています。
さまざまな分野で応用可能なハイブリッド技術
ナノ粒子の表面改質という技術は、つけるポリマーを変えればそれぞれの用途に合った粒子ができるので、いわゆるハイブリッド技術としても注目されています。例えば、タイヤはカーボンブラックにポリマーを巻いたものを成型しているのですが、巻いているだけなので摩耗しやすいという欠点があります。そこで、この技術を使ってポリマーを変えることで、より強度が高く、性能のよいタイヤを作ることができます。
さらに、この研究の知見を応用し、シリカの代わりに植物由来のセルロースという成分を使って、炭素のように硬く高性能で、環境にやさしい電子材料を作り出す研究も行われています。
次世代型エネルギーとして注目の燃料電池
電気化学反応で直接発電する燃料電池は、発電効率がよく環境にやさしいので、次世代のエネルギーとして期待が寄せられています。しかし、現在使われている燃料電池は、60年以上前にアメリカで開発された製品の性能をまだ超えていないのが実情です。そこで、すぐに応用できて、より安価で性能のよい燃料電池を作る方法として、「ナノ結晶」を利用した電極材料を使った製品が研究されています。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 教授 増原 陽人 先生
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