実験とシミュレーションの合わせ技! 地震に強い建物を作る
壊れにくい建物を作る
日本では地震が頻発し、大きな地震が起こると建物の倒壊などの被害が多く生じます。このような地震による建物被害を低減するために、壊れにくい建物の設計や建物の補強に関するさまざまな研究が行われています。例えば建物のリニューアル工事に伴って、エアコンやガスなどの配管設備のために梁(はり)に孔をあける場合があります。梁に孔をあけると当然強度は下がるので、この梁を既存の建築材料を使っていかに合理的な方法で補強するかというのも、建物を壊れにくくする研究の一つです。
木・鉄骨・コンクリートのハイブリッド
これまで木造の建物は、耐震性や耐火性の観点から大きな建物を建てることが難しい状況でしたが、近年、地球温暖化の原因である二酸化炭素を木の中に固定化しようと、木材を多く使ったより高い大きな建物を建てる取り組みが進められています。そこで開発されているのが、小さな板を張り合わせて大きな木材にした「集成材」と、強度・耐火性において優れている鉄骨とコンクリートを組み合わせた「木質ハイブリッド構造」です。この木質ハイブリッド構造については、すでに性能を調べる実験が行われ、性能評価法が構築されています。
実験とシミュレーションの組み合わせで
建物の構造性能や補強方法などの研究は、実験とシミュレーションを臨機応変に組み合わせて行います。実験では実際の構造物に力をかけて荷重と変形の関係を計測しますが、コストの関係で研究対象すべての構造物に対して実験はできません。そこで実験しなかったものについては実験で得られたデータをもとにして、複雑な構造物を解析するときに有用な「有限要素解析」の手法でシミュレーションします。研究対象の構造物が大きすぎて実験ができない場合も、構造物の一部だけ実験すれば残りの部分はシミュレーションで確認できます。新しい構造や補強方法の提案には、実際に設計するときの計算方法(構造設計法)が必要となるのです。
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