国内メーカーが実現した「夢の燃焼方式」が、エンジンの常識を変える

国内メーカーが実現した「夢の燃焼方式」が、エンジンの常識を変える

燃費向上とクリーンな排出ガスは両立できる?

省エネルギーや環境保護の観点から、燃費性能の向上と排出ガスのクリーン化が、エンジンの大きな課題となっています。軽油を燃料とするディーゼルエンジンの場合、排出ガスの通り道に触媒やフィルターを装着することで、大気汚染物質を減らす技術が採用されています。ただ、それらを機能させるためには余分な燃料が必要なので、排出ガスのクリーン化のために燃費を犠牲にしているのが現状です。一方、ガソリンエンジンの排出ガスは比較的クリーンですが、燃費はディーゼルほど良好ではありません。

2種類のエンジンの「いいとこ取り」

燃費性能とクリーンな排出ガスを両立させるため、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの「いいとこ取り」である「HCCI(予混合圧縮着火)」という燃焼方式が研究されています。
ディーゼルエンジンはエンジン内に吸い込んだ空気をピストンで圧縮し、高圧・高温の空気の中で軽油を噴射し自然着火させます。一方のガソリンエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合気にスパークプラグで着火しますが、ディーゼルの半分ほどしか混合気を圧縮しません。この「圧縮比」の違いが燃費性能の差につながっているので、ガソリンエンジンの圧縮比を高めれば、ディーゼルエンジン並みの低燃費が実現するはず、というのがHCCIの考え方です。

日本のカーメーカーがHCCI技術を開発

ただ、ガソリンエンジンの圧縮比を高め過ぎると、混合気が自然着火しノッキングと呼ばれる異常燃焼が生じます。そんな中、国内の自動車メーカーが、スパークプラグの火花と圧縮による自然着火の両方を利用する高度な燃焼制御技術を開発し、燃費性能が約30%向上すると見込まれています。
「内燃機関」のエンジンは、トラックやバス、建設用機械などにも使われています。また、発電用タービンなどの「外燃機関」もエンジンの一種です。ですから、それらのメカニズムについて研究する「熱流動工学」は、世の中を支える学問だと言えます。

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広島工業大学 工学部 電気システム工学科 ※2025年設置構想中 教授 吉田 憲司 先生

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熱流動工学、熱工学、流体工学

メッセージ

あなたの自宅にあるエアコンが、スイッチを切り替えるだけで冷房も暖房もできる理由を知っていますか。それは、「電気を熱に変える」電気ストーブなどと違い、エアコンは「熱を移動させる」機械だからです。
熱と、その伝わり方の研究は、さまざまな工業技術への応用を通じて環境問題にも寄与します。あなたが、大学で熱力学関連の学問を選択したいと考えているのなら、理系科目をしっかり勉強するのはもちろん、身の回りの環境問題に対しても、「自分にも関わりのあること」として目を向けるようにしてください。

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