コンクリートとカーボンニュートラル
コンクリートとは
コンクリートは、建築や土木の構造部材として使われている、現代の暮らしには欠かせない材料です。セメントに骨材と呼ばれる砂や砂利を混ぜて作られるコンクリートは、水を加えることでセメント粒子と水が水和反応を起こし、反応により生成された水和物が骨材と結びつきながら硬化します。コンクリートは、世界全体において水に次いで使用量の多い物質であり、日本では年間でおよそ2億トンものコンクリートが出荷されています。
コンクリートが抱える問題と取り組み
セメントは、石灰石や粘土などを混ぜ合わせ、約1450℃で焼成して作られます。焼成時には二酸化炭素(CO₂)が排出されるため、セメント業界のCO₂排出量は国内全体の約5%に及びます。温室効果ガスは削減したいところですが、セメントはコンクリート強度の確保に関わる材料なので、単に配合量を減らすわけにはいけません。そのため、コンクリート業界では、カーボンニュートラルに向けてさまざまな取り組みが行われています。一例として、カナダのカーボンキュア社は、練り混ぜ時にCO₂を加えることで、セメント量を減らしても同程度の強度が確保できるという技術を開発し、収益化に成功しています。工場などで排出されるCO₂を採取して液化し、コンクリート錬り混ぜ時に注入すると、セメントの水和物である水酸化カルシウムとCO₂が反応してナノレベルの小さな物質が生成され、セメントに付着します。これを核として、セメントから硬化成分が溶出して付着していくために硬化後の強度が高まるのです。
コンクリートの未来
日本でもカーボンキュア社の技術を導入した企業が現れました。日本で普及するには、国内での実績が必要であり、強度と耐久性のほかに、練り混ぜから工事までが滞りなくできる施工性を保証できなければなりません。
現時点では、コンクリートを取り巻く環境は決して良いものとは言えませんが、あなたの探求心と自由な発想が明るい未来に導いてくれるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
広島工業大学 工学部 建築工学科 教授 坂本 英輔 先生
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