ロケットエンジンを学ぼう
エンジンが溶けて壊れる「振動燃焼」
宇宙へ飛ぶロケットに欠かせないのが、膨大な推進力を発生させるロケットエンジンです。その開発においては、さまざまな問題があります。その1つが「高周波振動燃焼」という、エンジン内の圧力が激しく振動し、燃焼器が溶けて壊れてしまうという現象です。
宇宙開発初期からの課題だったこの現象ですが、エンジン内で何が起こっているのか長年わかっていませんでした。エンジン内の圧力の変動を再現する研究が各国で試されて、近年ようやく再現実験に成功し、メカニズムの解明に近づきました。
流体力学でロケット操縦の自由度が上がる
こうしたエンジンの改良、効率化には、液体や気体など「流体」の挙動を解析する流体力学の成果が生かされています。高周波振動燃焼を防ぐことができれば、開発コストを大幅に削減できます。また、これまでロケットの操縦は推進力をほとんど変えられませんでしたが、推進力をゆっくり上げて滑らかに加速する、推進力をゆっくり絞って降りてくるといった、制約の少ない操縦ができるようになるでしょう。SFアニメに出てくるような宇宙ロケットが実現できます。
ロケット開発から水道管まで
管の中や平板上での流れは、速度が遅いと乱れの少ない「層流」になり、速くなると乱れの多い「乱流」になるということは、100年以上前から知られていました。しかし、層流と乱流が何をきっかけに切り替わるのかは、長年の謎でした。それが特定の法則に従って変化する、という仮説に基づいた研究も現在進められています。このメカニズムがわかれば、層流と乱流の切り替えをコントロールして、都合のよい流れを作れるようにもなるでしょう。
この研究はロケットエンジンの開発に重要なだけでなく、管の中の流れという点で言えば、水道管や石油のパイプラインの流れの効率化や、エアコンやラジエターの効率化にもつながり、エネルギーの効率的な利用が可能になります。ロケット開発は、私たちの生活と無縁ではないのです。
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先生情報 / 大学情報
中部大学 理工学部 宇宙航空学科 教授 苅田 丈士 先生
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