情報通信サービスにおける「満足」って何だ?
「感覚」を品質向上に生かす
現代のスマホ用通信ネットワークは、ひと昔前とは比較にならないほど大容量のデータを送受信できるようになりました。それでも、多くのユーザーが同時に利用すると、サイトにつながりにくい、動画がスムーズに再生されない、操作に対する反応が遅いなどの不満につながってしまいます。
アプリや情報通信サービスを提供する側も品質向上に力を入れていますが、どの部分をどう改善すべきか、明確な指標がなければ適切な改善は行えません。漠然とした人間の感覚を数値で表すなど、目に見えるかたちで評価しなければ、品質向上は難しいのです。
画質が悪くても満足できる?
動画サイトのデータは、圧縮度が低いほど高品質な映像と音声が楽しめます。ただ、その分、多くのデータ通信量が必要となるため、再生待ちの時間が長くなったり再生中に停止しやすくなったりします。高品質ながらも途中で何度もストップする動画より、やや低画質でもスムーズに視聴できる方が、ユーザーはむしろ満足感を得られます。
このように、情報通信サービスの利用時、ユーザーが体感する品質のことを「QoE(Quality of Experience)」と呼び、どのような状態の時にQoEがどう変化するのか、人間の感覚を科学的に計測する研究が、情報通信工学の分野でも進められています。
未来社会の中で大きな役割を果たす情報通信工学
「ソサエティ5.0」という言葉があります。インターネットを介してさまざまなモノがつながるIoT技術と、AI(人工知能)、ロボットなどを結びつけることで、少子高齢化や環境保全、地方経済の活性化などさまざまな社会的課題を解決しようという、我が国が提唱する近未来のコンセプトです。
情報通信工学は、「ソサエティ5.0」を実現するために必須となるコンピュータやネットワークに関する技術を学ぶだけでなく、システムやサービスを利用するユーザーの豊かな生活につなげるための「満足」についても取り扱うため、心理学や社会学なども応用する、幅広い学問領域なのです。
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先生情報 / 大学情報
広島工業大学 情報学部 情報システム学科 ※2025年設置構想中 教授 林 孝典 先生
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