次世代の建物は、消費エネルギーが限りなくゼロになる
消費エネルギーの削減が進まない建築分野
地球温暖化を防ぐために、二酸化炭素の削減に多くの国が取り組んでいます。日本もパリ協定で2030年度までに2013年度比26%削減することを目標としました。これを実現するためには、省エネや再生可能エネルギーを利用して化石燃料の使用を抑えることが必要です。しかし建築分野では、エネルギー消費が全体の約3割を占めるにもかかわらず、消費の削減が進んでいないのが現状です。そのため、政府も建築分野のエネルギー消費4割削減を目標としています。
ZEBで新築建物を省エネ・再エネ対応に
建築分野のエネルギー削減が進まないのは、古い建築物が多いためです。今注目されているのが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)という考え方です。これは、省エネや再生可能エネルギーの使用でランニングコストをゼロに近づけるという考え方です。
太陽光パネルを設置して、昼間は太陽光で発電された電気を利用し、余った電気は充電します。充電された電気は夜間に使用し、電気自動車のバッテリーに充電することも可能です。また、太陽熱を利用する省エネ対策では、家庭用として太陽熱利用の給湯器を利用します。ビル用では、空気中の水分を除湿剤で除去して空調を行う「デシカント空調機」があります。これは太陽熱を利用することができ、冷媒を用いた通常の空調機に比べ格段にコストを抑えることができます。
電力のピークをカットする
建物そのものの省エネ性能を高める方法もあります。断熱材を利用したり、窓をペアガラスにしたり、サッシをアルミではなく熱伝導率の低い樹脂製にすることで、冷暖房の使用を抑えることができます。これからの技術としては「デマンドレスポンス」があります。通常、電気の供給調整は供給側で行われていますが、デマンドレスポンスはITを利用して空調の設定温度を調整したり、需要側にある充電器などを共有したりすることで、需要側で電気利用が急激に高まるピークの電力を低くするというものです。
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山口大学 工学部 感性デザイン工学科 准教授 桑原 亮一 先生
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