廃校となった小学校をどう活用すればいいか

廃校となった小学校をどう活用すればいいか

地域の核、意外に住民の愛着が強い小学校

小学校の統廃合が、全国で進められています。特に目立つのが地方の公立小学校です。少子化により子どもの数そのものが減ってきていることに加えて、自治体の財政難が統廃合に輪をかけているようです。
しかし、小学校は地域住民の核となる場所です。その校区はほとんどの場合、学校を中心として徒歩圏内に設定されています。地域住民にとっては身近な場であり、子ども時代の思い出が詰まっている小学校が廃校となると、その喪失感は大きなものがあります。

学校の空間をそのまま生かした利用法

では、廃校後も校舎だけは生かしたい、そのためにはどうすればいいでしょうか。建築計画学的に考えれば、学校の空間に近いのは宿舎です。自然環境に恵まれた立地であれば、そうした活用法も選択肢の一つになるでしょう。
施設ごとの活用法を考えれば、例えば中庭はオープンな空間としてとらえることができ、駐車場やイベント会場としての利用が考えられます。講堂は演劇空間として使え、教室は喫茶店などのお店や生涯学習の場として活用できるでしょう。東京では廃校となった小学校を丸々、ある企業が自社のオフィスに使っているケースもあります。

本来なら学校は学校として使うのがベスト

しかし、建築本来の主旨から言えば、小学校として造られた建物は、小学校として使うのが本筋です。逆に言えば小学校の形をした建築物を、学校以外の用途で使うのには、どこか無理があります。
本来なら、廃校になってしまってからその活用法を考えるのではなく、まず廃校にならないように地域の子どもの人口を維持する策を考えるべきです。単に建築上の問題ではなく、人口の経年変化までを視野に入れた地域の問題です。
大阪府の千里ニュータウンなどでは古くなった府営住宅の建て替え時に、民間マンションも併設することで子どもが増えてきました。こうした手法も含めて、長期にわたる人口のコントロールについて考える必要があります。

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大阪大学 工学部 地球総合工学科 建築工学科目 教授 横田 隆司 先生

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メッセージ

建築の中でも、将来デザイン系に進みたい人は、意識してセンスを磨くようにしてください。センスの磨き方を教えることはできても、センスそのものを教えることはできないからです。具体的には、美しいモノや景色を見ることをお勧めします。神社仏閣なども日本的な空間を肌で感じることができる貴重なスペースです。建築だからといって建物にこだわる必要はありません。優れた彫刻や絵画を見るだけでも、センスは養われます。数学や物理など理系の科目が得意で、さらに感性豊か、そんな人物をめざしてください。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。