「自由であること」それが建築設計の出発点
ル・コルビュジエのロンシャン教会
ル・コルビュジエという建築家がいます。近代建築の巨匠と言われる建築家で、彼が設計した作品にフランスの片田舎に建つ「ロンシャン教会」があります。正式名称は、ノートルダム・デュ・オー(高い位置に建つノートルダム)と言います。ノートルダムとは、キリストの母であるマリアを指します。この教会は、カニの甲羅の形をした屋根と、厚い壁にランダムに穿(うが)たれた小さな窓が特色です。この形状には意味が込められています。マリア=母からは海が連想されます。甲羅は海のイメージであり、また小さな窓は海中から見上げた水面を感じさせ、それをモチーフにデザインされたものです。つまり、マリアを象徴した建築です。
建築の設計は自由に考えていい
この建築は、「何かを象徴したい」という発想でつくられています。
建築は本来自由であるべきで、「自由」を発揮するところに建築家の存在意義があります。今までつくられてきた建築を分類してみても、象徴的な発想もあれば、彫塑的な発想、幾何学的な発想、敷地や用途など設計条件からの発想、構造などの技術的な発想、さらに定型的な発想などがあります。もちろん、この分類以外の建築をつくってもかまいません。建築家に求められているのは、その人にしかできないことを表現する「個性」なのです。
個性を持つために必要なこと
そうは言っても、現実の世界で個性的なデザインを押し通すことは簡単ではありません。世間の常識や、施主の意向、工務店や販売など専門的な立場からの要望で個性が希薄になり、よくある建築になりがちです。そうならないためには、交渉力も必要でしょう。しかし、最も重要なのは自分のこだわりを自覚することです。世の中には、多くの優れた建築があります。しかし、あなたはそのすべてを好きなわけではないはずです。自分の好きな建築が何かを意識すれば、こだわりたいことがわかってくるでしょう。それが個性へとつながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
崇城大学 工学部 建築学科 教授 西郷 正浩 先生
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