制限があっても大切にしたい! 町家と路地の生かし方とは
町家と路地の活用
木造家屋「町家」や幅2~3メートルほどの「路地」は、特に戦火を免れた京都に数多く残っています。しかし建築基準法ができる前から建っているため、今の法律や社会制度に合わない部分も多いのです。例えば町家は、隣同士の敷地の境界線が曖昧です。それが家の内と外との、中間的な領域を生み出す木造文化の特徴なのですが、今の法律には合いません。また、今は幅4メートル以上の道に面した場所にしか住宅は建てられませんが、たいていの路地はそれ以下です。町家や路地は、リフォームが制限されたり、ローンが組みにくかったりすることがあります。そこで京都市は識者と意見交換しながら、許可制度や認定制度を整え、京都らしい町家や路地の保存に力を入れています。
住む人に暮らしについて聴く
すでにある建物を生かす場合、住む人の家の使い方や使われ方を調査し、それを元に建築計画を考えます。特に町家のような築100年にもなる建物には、変わった形の階段やお風呂があったり、庭いっぱいに増築がされていたり、あるいはかつての仕事場がまったく別の使われ方をしているなど、住んできた人の物語があちこちにつまっています。建築家はそれらを受け止めて、歴史とニーズ、古いものと新しいものとの融合を考え、美しいデザインとして提案します。
町の中に息づく、特別空間
建築は、社会情勢を反映します。例えば車が入れない路地は、人と人とが安心して世間話ができ、小さな子どもが三輪車に乗って遊べる、現代では少なくなった貴重な外部空間です。新型コロナウイルス感染症の流行で、その価値がさらに見直されています。将来また社会が変化しても、既存の空間が見直されたり、新たな空間が作られたり、それらの持つ意味を掘り下げる視点が大切になったりするでしょう。実際に現在の住宅業界では、新たな住宅のプランニングが次々に提案されています。社会の変化に直結する建築は、今後も尽きないテーマと広がる可能性を持っています。
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先生情報 / 大学情報
京都美術工芸大学 建築学部 建築学科 教授 森重 幸子 先生
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