社会環境や自然環境に最適化された、持続する建築とは?

社会環境や自然環境に最適化された、持続する建築とは?

持続可能(サスティナブル)な建築のデザインとは

建築は、街の風景の中に占める割合が大きいものです。例えば、ヨーロッパでは、築100年超の建物を修復して住む習慣があり、日本でも京都などでは、寺社仏閣の修復、古い町屋の再利用などにより、古くからの建築物は美しい景観を保つ一因となっています。これらの事例から、建築物は、工学的な側面のみならず文化的側面が備わってはじめて、使い続けられていくことがわかります。しかし、日本では多くの場合、収益性の観点などから古い建物は壊され新築される傾向にあり、風景が醸成されにくい状況です。古い建物をいかに修復して活用するか、新しく建物を建てる時にはいかにして持続性のあるものにするか、といった視点が重要です。

最適化する建築

日本では、バブル期に「ハコモノ」と呼ばれる公共施設が多く建てられ、その建設費のみならず維持費について多くの疑問が投げかけられました。また、それらの建物は近年修復し活用されることなく、建て替えられている有様です。
これに対し、設計の段階であらゆる条件を取り込み、将来的に条件が変わっても対応できるような柔軟性をもった建物ができないかを、模索する必要があります。建てることで、環境が人にとって最適な状態に変化していくような建築です。

建築の可能性

例えば、昨今、人口密度の高い住宅街で、保育園不足という課題に対し、近隣住民から騒音を理由に建設が反対された例が話題になりました。人口密集地だからこそ保育園が必要なのに、密集しているがために騒音問題が起きるという矛盾に対し、建築のつくり方を工夫することで、子どもたちがのびのび過ごせると同時に、周囲の人々もその存在を快く受け入れることのできる、程よい距離をつくり出すことができます。与えられた環境が常にいい状態でバランスし、最適な状態に保たれるような建築のあり方が求められているのです。

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先生情報 / 大学情報

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 木下 昌大 先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 木下 昌大 先生

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デザイン学、建築学

メッセージ

何もないところに引く一本の線が、社会で本当に使われる空間として立ち上がり、使った人に喜んでもらえるところが建築の面白いところです。思い通りにならないこともありますが、想定以上の新しい使い方をしてもらえることもあります。建築のことがわかるようになると、周りの建物を見たときに、構造、素材、コスト、社会的意味などさまざまなことが見えてきます。街の見方が変わってくると、いろいろな国に旅することもより楽しくなります。

先生への質問

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京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。