多方面から建築物の寿命を延ばす方法を考え実践する
建物の寿命という概念
あなたの住まいは築何年目ですか? 日本では一般的に建物の寿命は木造が22年、RC(鉄筋コンクリート造)が47年と言われています。しかし、この年数は固定資産税のために法令で決められた耐用年数で、近年は技術の発達の影響もあり建築物の寿命は耐用年数よりも大幅に長いと考えられます。また、古い建築物でも定期的なメンテナンスや修繕を行えば、長持ちさせることができます。しかし近年、人が住んでいない「空き家」が全国的に問題となっているように、技術の発達も建物のメンテナンスも使いたいと思う人がいてこそ生かされるものです。建物の長寿命化は、建物の性能だけではなく、地域コミュニティや持続可能性と切っても切れない関係なのです。
建物と人々のコミュニティの相互関係
建物の寿命の話題では、ヨーロッパがよく日本の比較対象になります。ヨーロッパでは文化を重視する観点から建て替えに厳しい制限があり、基本的に使い続けることを前提としたメンテナンスが行われています。この建物に対する活動を通して地域コミュニティが継続すると、そこに文化が形成されます。一方で日本は昔から災害が多かったこともあり、高度経済成長以降は短期間で壊して建て替える「スクラップ・アンド・ビルド」の考え方が根付いてしまいました。建物を大切にメンテナンスしながら長く使い続ける人が多い地域は、そこにあるコミュニティも魅力的で持続可能でしょう。
建物と地域の持続可能性
空き家の利活用には、利用希望者を増やすためにも地域コミュニティの形成が求められます。「建築」というと、どうしてもハードウェアとしての面に目が向きますが、建築物はただ建てれば良いのではなく、使う人々の環境や地域に併せてソフトウェアの改善策を考える必要があります。そのためには、現在の建築技術の発展に合わせた法令や会計などの仕組みの改善も必要になります。さまざまな側面から人々の意識を変えていく活動の実践が、建物そして地域の持続可能性を高める大きなカギになります。
参考資料
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前橋工科大学 工学部 建築・都市・環境工学群 准教授 堤 洋樹 先生
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