「受験のため」の部分的知識ではない大学の数学は面白い!
大学の数学は、高校数学の進む先にある
大学で学ぶ数学のひとつに代数学があります。この基礎は高校で学ぶ数学の中にもあります。整数と多項式は、中学校から馴染みのある対象です。高校までは、これら個別の性質について学びますが、大学では少し違った視点から学びます。個々の性質にとらわれず、これら全体の集合が持つ性質を調べる視点に立つことで、対象は異なっても似た性質があることがわかり、背後に広がる数学が見えてきます。
豊かなイメージを持つ代数学
「1より大きい任意の整数Nは有限個の素数の積に一意的に表せる」という定理があります。例えばNが30のとき、合成数30は、2、3、5という素数の積に分解し、その分解の仕方はこれ以外にないというものです。この「素因数分解」の基礎には「割り算原理」があります。高校で学ぶように、1変数多項式でも「割り算原理」が成り立ちます。この点に着目して「次数が1以上の多項式は有限個の既約多項式の積に一意的に表せる」という類似の定理が、素因数分解の場合と全く並行に証明できます。
整数全体や多項式全体は足し算・引き算・掛け算が可能な集合で、可換環(かかんかん)と呼ばれる代数系の典型例です。この代数系の視点から眺めると、割り算原理が成り立つ環では一意分解定理が成り立つことが理解でき、整数や1変数多項式以外にも同様の性質を持つ対象の存在が明らかになります。
多変数多項式に対する1変数多項式の場合と類似の性質を持つ概念として「多変数多項式の割り算」や「グレブナー基底」があります。これらは、数学におけるいろいろな計算を可能にするばかりでなく、統計学などを含めたいろいろな分野への広い応用の道を開きます。
大学での数学で、数学の別の面が見える
高校までの数学は、現在もなお発展を続ける数学の一部分であって、その先には広く豊かな世界が広がっています。大学では、数学の全く別の側面も見えてきて、数学の理解がさらに深まります。
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岡山大学 工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 准教授 早坂 太 先生
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