「一番良い」を見つけるオペレーションズ・リサーチと離散凸解析

「一番良い」を見つけるオペレーションズ・リサーチと離散凸解析

現実の問題を数理モデルに置き換えて計算する

「オペレーションズ・リサーチ(OR)」とは、現実のさまざまな問題を数理モデルに置き換えて、計算できる形にしようという学問です。ORでは、与えられた条件の中で最も良い選択を導くために、数学を駆使した理論を構築し、それに基づいたアルゴリズム(計算手順)を組み立てて、コンピュータを使って解決していく「最適化」を行います。ORは、単に数学的な結果ではなく、それを現実の問題に応用できてこそ意義があるのです。

現実社会の意思決定は連続でない整数が多い

一般に、高校で習うのは連続関数で、つながっていて微分できたりしますが、現実社会の意思決定は連続でないところで行われることがほとんどです。例えば企業が生産計画を立てる場合、連続でない整数で扱うことのほうが多いため、コンピュータが最適だと算出した数値が少数や分数だと、それが現場で使えないことも少なくありません。人の配置でも、人は「0.8人」のように分割できません。その場合は最適化する対象を離散(連続でないもの)として扱います。そのことをORの最適化の中でも、「離散最適化(組合せ最適化)」と呼んでいます。

離散でも速く正確に答えが出せる「離散凸解析」

整数は簡単と思うかもしれませんが、実はコンピュータは離散の計算が苦手です。切り上げ・切り捨ての判断がし辛いためにでたらめな答えになってしまったり、微分による効率的に関数の値を変化させる情報が使えなかったりするので、一般的に、離散の最適化は難しいと考えられています。それを改善する理論が、1990年代から研究が始まった「離散凸解析」です。離散の世界では微分ができないので代わりに差分(足し算・引き算)で考え、連続の世界で重要な凸解析(凸関数の性質を研究する分野)の理論が離散であるにもかかわらずうまく導入できているという特徴があります。したがって、これまでは難しいと考えられていた離散の問題であっても、離散凸解析を使うことで、速く正確に答えが出せるようになるのです。

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東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 森口 聡子 先生

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経営科学、数理工学、社会科学、経営学

メッセージ

オペレーションズ・リサーチ(OR)では、数学やコンピュータを使って、現実社会のさまざまな問題の改善策や改良案を科学的に提示していきます。適用先は企業の経営活動から公共政策、日常生活の身近な問題まで多岐にわたるため、文系・理系を問わない幅広い視点が求められます。いま高校では文系・理系に分かれて勉強し、文理融合のイメージは湧きにくいかと思いますが、大学に入ったらORに限らず、文理融合の学問がいろいろとあります。そういった複合領域、境界領域で活躍することも念頭に置いて、勉強していってほしいと思います。

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