明日の宇宙は荒れ模様? 「宇宙天気」を予測する
宇宙の天気が社会を揺さぶる?
「宇宙天気」とは、太陽の活動の影響によって地球周辺の宇宙環境が大きく変動することを指します。太陽活動が活発化すると、太陽表面の大規模爆発「太陽フレア」が起きて、強い電磁波や高エネルギー粒子が宇宙空間に放出されます。これらにより地球の電離圏の状態が大きく変化することで、船舶などの運航に支障をきたし、また人工衛星の軌道が大きく変わることもあります。太陽活動は約11年周期で変化します。その影響で2024年5月には日本の低緯度地域でもオーロラが見られ、5月だけで最大警戒レベルの太陽フレアが21回も発生するという、観測史上初の出来事もありました。
宇宙天気を予報する
太陽フレアによる被害を防ぐためには、太陽を観察して宇宙天気を予測することが必要です。太陽の活動を計測する機器は年々高性能になっており、従来は測れなかった高周波数帯のデータも取得できるようになりました。一方で、データが大量なため、従来の目視によるイベント抽出では1カ月程度のデータの調査も一苦労です。コンピュータを使うにも、従来の解析手法では膨大な計算コストがかかってしまい、実用には適しません。
「宇宙天気インフォマティクス」の誕生
そこで、グラフ理論や文字列照合などを用いて計算コストを大幅に削減する新しい手法が開発されました。この手法により、数年分のデータを短時間で解析することが可能となり、瞬時に宇宙天気を把握することができます。また、近年は衛星インターネット網がインフラを担うなど、人工衛星の重要性が増しています。そこで、宇宙天気が衛星の運用に与える影響を調べるために、衛星の軌道データと宇宙天気データの相関解析も行われています。こうした新しい解析手法は「宇宙天気インフォマティクス」と名付けられ、新たな分野が切り開かれようとしているのです。
これらの解析手法は膨大なデータを扱う他分野にも適用できます。「宇宙天気インフォマティクス」から生まれた成果が、他分野の進展に役立つ可能性も期待されています。
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先生情報 / 大学情報
九州工業大学 情報工学部 知能情報工学科 准教授 藤本 晶子 先生
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