「指紋」と「追跡」で情報を守る新たなサイバーセキュリティとは?
守りから追跡へのセキュリティ技術の転換
これまで情報の不正なコピーを防ぐための研究は、コピーができないようにデータを暗号化する技術の開発に重点が置かれてきましたが、その技術では、一度情報が漏えいしてしまったら、データや制作者を守るすべがありませんでした。
しかし、例えば食品業界では、生産者から販売者までの流通経路が追えるようになったことで、消費者の安心が深まりました。同様にマルチメディアコンテンツにおいても、誰の手によってどこから情報が漏えいしたかを追跡できるようにすれば、制作者や正当な販売者の権利と安心は、より強固に守られるようになります。つまり、サイバー空間において情報の追跡を可能にする技術によって、情報のセキュリティを守るという方法が注目されています。
見えない「指紋」に残された情報を追って
トレーサビリティ(追跡可能な状態)を実現するためには、電子的な「指紋」が重要になります。例えば、「誤り訂正符号」といった符号を解析されにくい形に変換してデータに埋め込むことで、漏えいしたデータに残された「指紋」を明らかにし、情報の不正な操作に関わった人物を検挙することができます。
この研究はサイバーセキュリティをより広い視野でとらえ、これまで守れなかった情報や人をより高度なレベルで守ることをめざしたものです。その範囲は、追跡して人物を特定するシステム全体の構築や指紋情報の符号化、不正に作られたコピーから符号の情報を検出するアルゴリズムの考案にまで及びます。
サイバーセキュリティに求められるもの
最近では、情報が発信された場所や人物を追跡し、正しい情報であるかを見分ける技術の開発も行われています。インターネットを通じて膨大な情報が生み出されるようになり、情報は盗まれるだけでなく、不正に偽造され国境を越えて拡散される危機にもひんしているからです。今後の情報の安全性は、国際的なフィールドを見据え、研究が進められることが期待されているのです。
参考資料
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岡山大学 工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 准教授 栗林 稔 先生
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