数学を使ったネットワーク分析で、世の中の役に立つものを創造する

数学を使ったネットワーク分析で、世の中の役に立つものを創造する

ネットワーク科学とは

「ネットワーク科学」は、社会に存在する多様で大規模かつ複雑なネットワークを対象とする学問領域です。その目的には、種類の異なるネットワークに共通して見られる普遍的な特徴を解明すること、重要なノードを高速かつ効率的に求める方法を開発すること、ネットワークの構造を最適化することなどが挙げられます。例えば、グーグルは「ページランク」と呼ばれるウェブページの順位付けの計算アルゴリズムを考え出しました。これは、数学の知識を基に導き出されています。

ネットワークの形成過程を数式で説明できる?

知人関係のネットワークでは、ある人の知人2人が互いに知人関係にあることは多いものです。また、社会学の分野では、知人関係をたどっていけば6ステップでどんな人ともつながるという「六次の隔たり」という言葉が古くから知られています。1998年に学術雑誌『ネイチャー』で発表された「スモールワールド・ネットワーク」は、このような性質を持つネットワークが簡単な数式で作られることを示すもので大きな注目を集めました。現実のネットワークをコンピュータで再現できれば、それを使ってさまざまな現象を調べることができます。世の中のネットワークがどうやってできるのかを数式で説明することはネットワーク科学の重要な課題の一つです。

実用化を視野にいれた研究

ネットワーク分析により、「最短経路」「誰に宣伝すれば効果が最も大きいか」「病気の感染を防ぐには誰の行動をどう制御すればいいか」など、さまざまなことがわかります。ロボットが複数台で移動する時に、各ロボットの情報を効率よく全体に伝えたり、群れを崩すことなく同じ方向に移動したりすることもできます。これらの技術は福島原発の原子炉の中の調査や人間の体内を検査する小型ロボットなどへの応用が期待されます。このように、ネットワーク分析は、数学を用いて世の中の役に立つものを作り出す研究なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

岡山大学 工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 教授 高橋 規一 先生

岡山大学 工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 教授 高橋 規一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報工学、数理工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

数学か工学か進路に迷ったら、工学の分野でも数学を基礎として数学的観点から工学に取り組む研究分野もありますので、工学を選択肢として考えてみてください。
理学部は真理の追究が中心ですが、工学部は応用を見据えて社会との接点を保ちながら研究します。素因数分解が今では暗号に使われている例もあり、工学に関心を持つ数学者も、数学が理解できる工学者もどちらも必要です。今は基礎をしっかり学んでください。数学とは暗記科目ではなく、じっくり考えて答えを導き出すものなのです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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岡山大学に関心を持ったあなたは

岡山大学は、これまでの高度な研究活動の成果を基礎として、学生が主体的に“知の創成”に参画し得る能力を涵養するとともに、学生同士や教職員との密接な対話や議論を通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援し、国内外の幅広い分野において中核的に活躍し得る高い総合的能力と人格を備えた人材の育成を目的とした教育を行います。