不規則なガラスの構造の中に規則性を見いだす

不規則なガラスの構造の中に規則性を見いだす

原子やイオンが不規則に並んでいる固体がガラス

ガラスとは何でしょう。窓ガラスのようなものだけが「ガラス」ではないのです。構成している原子やイオンが不規則に並んでいる固体をガラスと呼んでいます。その点が金属などほかの固体と違います。しかし、不規則といってもまったくの無秩序というわけではありません。そこには何らかの規則性も存在しています。ガラスの規則性を明らかにしていけば、不規則なガラスがなぜ固体として安定しているのかという理由も明らかになっていくはずです。そうなれば、ガラスの構造への理解が深まり、ガラスの応用や新しい物質の創造にもつながっていきます。

X線や中性子線を照射して構造を予測

ガラスの構造を調べるには、X線や中性子線をガラスに照射します。これらの放射線が物質に照射されると、一部は当たって散乱します。X線は物質中の電子に反応し、中性子は原子核に当たって散乱しますので、方向と強度を測定し、それらのパターンを解析することで、原子がどのような不規則な配列になっているのかがわかります。このほかにも、ガラスに含まれる原子やイオンの構造を測定する方法があります。これらの情報を総合し解析することで、ガラスの構造を予測することができます。

放射性物質を長期間安定してガラスに閉じ込める

この研究の応用として、ある放射性物質をガラスに閉じ込めて、地下深く埋めるという計画があります。この放射性物質は融点が低いため、500度という低い温度で閉じ込める必要があります。その条件に合っているのが、酸化鉛とホウ酸を主な成分とするガラスです。このガラスには、放射性物質が減衰し終わるまでの長期間、壊れずに安定した状態を保たせる必要があります。また、地下水などに放射性物質が溶け出さないような構造にする必要もあります。ガラスの構造の理解がこれを可能にするはずです。

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岡山大学 工学部 化学・生命系 准教授 紅野 安彦 先生

岡山大学 工学部 化学・生命系 准教授 紅野 安彦 先生

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環境物質工学

メッセージ

私が、新しい構造や機能を持った無機材料を作るという研究分野を選ぶようになったきっかけは、大きく2つあります。1つ目は大学受験の時に、化学系の学科を選択したことです。2つ目は、卒業研究の時に無機材料の研究室を選択したことです。その時々で最も興味のあることを選択しているのは確かで、興味のあることをとことん追究することは大切だと思います。あなたも若い時に持っている幅広い興味を狭めることがないように、いろいろな分野で興味を持ち続けてほしいと思います。

岡山大学に関心を持ったあなたは

岡山大学は、これまでの高度な研究活動の成果を基礎として、学生が主体的に“知の創成”に参画し得る能力を涵養するとともに、学生同士や教職員との密接な対話や議論を通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援し、国内外の幅広い分野において中核的に活躍し得る高い総合的能力と人格を備えた人材の育成を目的とした教育を行います。