不規則なガラスの構造の中に規則性を見いだす
原子やイオンが不規則に並んでいる固体がガラス
ガラスとは何でしょう。窓ガラスのようなものだけが「ガラス」ではないのです。構成している原子やイオンが不規則に並んでいる固体をガラスと呼んでいます。その点が金属などほかの固体と違います。しかし、不規則といってもまったくの無秩序というわけではありません。そこには何らかの規則性も存在しています。ガラスの規則性を明らかにしていけば、不規則なガラスがなぜ固体として安定しているのかという理由も明らかになっていくはずです。そうなれば、ガラスの構造への理解が深まり、ガラスの応用や新しい物質の創造にもつながっていきます。
X線や中性子線を照射して構造を予測
ガラスの構造を調べるには、X線や中性子線をガラスに照射します。これらの放射線が物質に照射されると、一部は当たって散乱します。X線は物質中の電子に反応し、中性子は原子核に当たって散乱しますので、方向と強度を測定し、それらのパターンを解析することで、原子がどのような不規則な配列になっているのかがわかります。このほかにも、ガラスに含まれる原子やイオンの構造を測定する方法があります。これらの情報を総合し解析することで、ガラスの構造を予測することができます。
放射性物質を長期間安定してガラスに閉じ込める
この研究の応用として、ある放射性物質をガラスに閉じ込めて、地下深く埋めるという計画があります。この放射性物質は融点が低いため、500度という低い温度で閉じ込める必要があります。その条件に合っているのが、酸化鉛とホウ酸を主な成分とするガラスです。このガラスには、放射性物質が減衰し終わるまでの長期間、壊れずに安定した状態を保たせる必要があります。また、地下水などに放射性物質が溶け出さないような構造にする必要もあります。ガラスの構造の理解がこれを可能にするはずです。
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