『源氏物語』が時空を超えて愛される理由とは
海外でも人気を集める『源氏物語』
日本古典文学の代表作品である『源氏物語』は、いまや30以上の言語に翻訳され、世界中で人気を集めています。『源氏物語』が、時空を超えて人々を魅了し続ける理由はなんでしょうか。そのひとつに、複数のテーマを有していることが挙げられます。時代や文化の違いを超越する「普遍性」や「共感性」が、『源氏物語』にはあるのです。
高校の授業で古典を習うことに疑問を持つこともあるでしょう。文学や芸術は、実生活に直結するものではありません。しかし、私たちの心を豊かにしてくれます。古典文学を教える意義は、優れた文学作品を後世に伝えることにあります。
物語が歴史にも影響を与えた
平安時代の物語には、恋愛や結婚の話が多く描かれますが、当時の婚姻制度を把握しなければ、正しく理解できません。生活習慣だけでなく、政治、制度、思想にいたるまで、現代社会とは大きく違います。平安時代の歴史を踏まえることで、当時の読者と同じように、古典文学作品を読み解くことが可能になるのです。「歴史書に書かれていることは、実は世の中の一側面でしかなく、物語にこそ人間の真相真理が存する」と、光源氏は語っています。『源氏物語』を多面的に理解することは、日本の歴史、文化を知ることにつながるのです。
平安時代から現代までの日本を映し出す
文化というものは、長い年月を経て、形成されます。例えば、平安時代に始まる生育儀礼「産養(うぶやしない)」や「袴着(はかまぎ)」は、現代の「お七夜」「七五三」の原型です。伝統的な日本文化の源流が千年前に求められ、その実態が物語から読み取れるのです。
それ以降、時代は大きく変動しましたが、『源氏物語』は読み継がれてきました。中世の武家は『源氏物語』の絵巻や写本を収集し、近世になると町人たちも『源氏物語』のダイジェスト版やパロディ本を読みました。一方、戦時中には発売禁止措置が取られます。『源氏物語』の享受史はそのまま、日本の時代それぞれの様相を映し出しているのです。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 教育学部 子ども発達学科 准教授 高橋 麻織 先生
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