講義No.08211 外国文学

100年前の女性も「仕事と恋愛の両立」で悩んでいた!

100年前の女性も「仕事と恋愛の両立」で悩んでいた!

女性の葛藤を描いた作家ウルフ

イギリスの作家であるヴァージニア・ウルフ(1882-1941)は、20世紀フェミニズムの原点ともなる著作を多数残しました。ウルフが生きた時代、婦人参政権は得られていたものの、家庭の外で女性が活躍できる場は限られていました。ですから彼女のように職業を持つ女性は、「自立の道」と「女性としてのあり方」の狭間で常に葛藤を抱えていました。一方、ウルフが代表作『ダロウェイ夫人』で描いた主人公のように、家族を癒やす「天使」のような主婦も、「妻」や「母」としか見られない自分にどこか虚しさを覚えていたようです。

「仕事と恋愛の両立」は時代を超えた悩み

働く女性の葛藤は時代を経て続く普遍的テーマであり、現代の文学や映画、ドラマでもよく描かれます。ドラマ『アリー my Love』や映画『ブリジット・ジョーンズの日記』は、現代の「仕事と恋愛の両立」に悩む女性を描いた典型例でしょう。実際、同様の葛藤を抱えている女性は少なくありません。結婚して共働きなのに家事をするのはなぜ自分だけなのかといった、女性の悩みは尽きないのです。
女性の結婚や幸せな人生への渇望は、ウルフよりさらに前の18~19世紀の作家ジェーン・オースティンが小説『高慢と偏見』でも描いている古典的なものです。当時の女性は働くどころか、生きていくために、望まない結婚をせざるをえない場合も多く、不満があっても結婚生活を続けるしか道がありませんでした。

多様化した現代のフェミニズム

その点、女性が経済的に自立して生きていける現代は恵まれていると言えるでしょう。また新たな価値観として、男性に頼らず女性が連帯して生きるといった選択肢も生まれました。王子様に幸せにしてもらうのではなく、姉妹で仲良く国を治めるというラストを描いた『アナと雪の女王』は、そんな世相を反映しているとも言えます。一方、女性同士がしのぎを削り「女女格差」という言葉も生まれるなど、近年のフェミニズムは単純に男対女の構図では論じきれないものになっているのです。

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都留文科大学 文学部 英文学科 教授 加藤 めぐみ 先生

都留文科大学 文学部 英文学科 教授 加藤 めぐみ 先生

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英米文学、ジェンダー学

メッセージ

大学であなたを待っている「文学の学び」は高校までの国語と違い、読み手の数だけ、作品の解釈がある世界です。歴史や心理学、ジェンダーと、自分の興味の向くままあらゆる角度から作品に切り込んでよいのです。それはきっと、自分自身を深く知る作業にもなるでしょう。
また文学作品を多角的に見る方法を身につけると、「人や物事はさまざまな解釈ができるんだ」という広い視野を持つことができます。英文学を学ぶことで英語力が向上し、異文化理解が深まれば、英語教員、旅行・航空関連企業への就職など、職業選択の幅も広がるはずです。

先生への質問

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都留文科大学に関心を持ったあなたは

都留文科大学は、教員養成の大学として知られており、これまでに1万人以上の教員が全国の教育界で活躍しております。近年では企業・自治体への就職者も多く、優秀な人材を全国に輩出しております。2017年には、国際バカロレアを研究する「国際教育学科」を開設し、また、2018年には初等教育学科を従来の教員免許に加えて中学校数学・理科の免許も取得可能な「学校教育学科」に、社会学科を地域で活躍できるグローバルな人材を養成する「地域社会学科」に改編し、2学部6学科となり新たな歩みを始めました。