『ピーター・パン』の秘密 ~大学で学ぶ児童文学~

『ピーター・パン』の秘密 ~大学で学ぶ児童文学~

あなたは「ピーター・パン」を知っていますか?

ピーター・パンの服の色やガールフレンドの名前を聞かれたら、あなたは答えられますか? ディズニー作品で物語を楽しんできた人には簡単に思えるかもしれません。しかし、実はこれらは、専門家が「なんて答えようか」と頭をひねる難問なのです。なぜなら、J・M・バリが書いた原作には、ピーターの服の色に関する言及はありませんし、ピーターがネヴァーランドへ連れて行く女の子は、ウェンディだけではないからです。そもそも、バリ自身がピーター・パンの登場する物語を複数書いており、ピーター像がひとつではない、という大問題もあるのです。

再生産される物語からわかること

ネヴァーランドでの冒険を描いた『ピーター・パン』が、お芝居になったのは1904年のことです。それから今にいたるまで、ピーターの物語は、絵本、映画、マンガ、アニメ、ゲームなど、さまざまな形で子どもたちのもとに届けられてきました。ピーターの服の色も緑色とは限りません。では、服の色の違いによって主人公像はどのように変化し、物語解釈にどのような違いがもたらされるでしょうか? こういった細部に注目して、多様なメディアで再生産される物語を比べていくと、見えてくることがたくさんあります。国や時代ごとの「子どもに対する考え方の違い」もそのひとつです。

日本の子どもと『ピーター・パン』

『ピーター・パン』は大正時代に日本に紹介されました。それはちょうど、児童雑誌や絵雑誌が次々と創刊され、学校劇や児童劇の活動が始まるなど、児童文化が花開いた時代でした。当時のメディアを見ていくと、かなり個性的なピーターにも出会えます。海賊フックや妖精ティンカー・ベルも、今では考えられないような姿で描かれていることがあります。当時の子どもたちは、そんなピーターたちにいったいどんな夢を重ねたのでしょうか?
このように、児童文学作品について考えることは、子どもや子どもをめぐる文化について考えることにもつながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

白百合女子大学 人間総合学部 児童文化学科 教授 水間 千恵 先生

白百合女子大学人間総合学部 児童文化学科 教授水間 千恵 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

児童文学、YA文学、絵本学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は法学部へ進んだ後に児童文学を専門的に学べる場があると知り、卒業後に改めて大学に入り直しました。そんな私がまず伝えたいのは、好きなことを諦めないで、ということです。時々「これを学んで何になるのだろう」と考えて、好きなことを諦めてしまう人がいますが、それはあまりにもったいない! どんな学びも必ず社会の役に立ちます。たとえば児童文学の場合なら、その学びは、子どもたちに豊かな文化環境を提供し、彼らがこれから築いていく未来を支えることに繋がります。ぜひ、ひるまずにあなたの「好き」を追求してください。

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白百合女子大学は、他者とつながり、広く社会に貢献する女性の育成を目指しています。
日本、フランス、アメリカ・イギリスを中心にことばや文化を学び、国際的な思考力を養う文学部と、児童文学・文化、発達心理・臨床心理学研究、幼稚園・小学校教諭、保育士養成を行う人間総合学部の2学部6学科で構成されています。
学生一人ひとりの個性を大切にする少人数教育を重視し、対話型・体験型の授業では教員が学生の理解度を把握し、その能力を伸ばせるよう、細やかな指導が行われ、専門性を段階的に深めます。