触れればいいってわけじゃない! 「ためになる」自然体験とは?

自然体験学習は学校教育法でも重視
学校教育法第21条2では、「自然体験活動」の促進が謳われていますが、ただ自然の中に子どもたちを連れ出しても教育活動にはなりません。子どもたちが安全に過ごし、その体験から何を吸収するかは、教員の知識や、何を伝えたいかという問題意識が影響します。そこで、教員養成の一環として、教員をめざす学生たちに自然体験をさせる取り組みが行われています。
教員自身の実体験が教育効果を高める
学生たちの自然体験では、自ら課題を持って取り組みますが、体験をする中でそれ以上のことに気づきます。例えば川では、水に入ると転ぶ学生が続出します。場所や深さによって流速が違うことが、見ただけではわからないからです。こうした体験があれば、教員になった時、子どもの安全を守りながら、「川底と水の摩擦で流れの速さが変わるんだよ」など、物理現象にも興味を持たせるような機会を提供できるのです。
また、栽培活動でも、単に植物の成長を観察するだけでなく、そこからさまざまなことを学ぶ機会になります。例えば種をまく時に、種のパッケージを見て、原産国が外国であることを知ると、種の生産や農業の仕組みにまで学びを広げることができます。
教員自身が問題意識や好奇心を持ち、体験しながら実感を持ってそうした知識を増やすことが大切です。
自然体験と学力との関連を調べる
このように、学校教育の中で重視されている自然体験ですが、具体的な教育効果についてはまだ詳しく研究されておらず、科学的エビデンスは得られていません。例えば、自然の豊かな地域の子どもが、都市部の子どもより学力が高いというデータはなく、単純に「自然体験が豊かだと学力が高まる」とは言えません。自然体験にどのような教育効果があるのか、より効果のある自然体験学習はどのようにあるべきなのか、研究は始まっていますが、科学的な根拠を示して制度や教員養成に反映していくことが課題なのです。
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椙山女学園大学教育学部 子ども発達学科 准教授野崎 健太郎 先生
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