「アダプテーション」で物語は時空を超え、形を変えて語り継がれる
人気作品を多様なメディアで展開
小説、マンガ、映画、テレビドラマ、アニメ、ゲーム……、数々のメディアには多くの「物語」があふれています。現代ではひとつの作品が複数のメディアで展開されることも珍しくありません。1990年代末に児童文学書として出版され、世界中でベストセラーとなった『ハリー・ポッター』シリーズは8本の大ヒット映画となり、後日談も出版されました。またテーマパークでは人気アトラクションとなり、『ファンタスティック・ビースト』というスピンオフ作品もシリーズ化となり制作されています。このようにある物語が形を変えて語り直されることが「アダプテーション(翻案)」で、実は古くから行われてきた普遍的な手法です。
形を変え現代に語り継がれるシェイクスピア
アダプテーションは原作の物語を忠実に語り直したものとは限りません。偉大な劇作家シェイクスピアの古典的名作群は、『ロミオとジュリエット』『マクベス』『リア王』をはじめ数多くがアダプテーションの対象となっています。それらは原作をほぼ踏襲した作品もあれば、設定を現代に移し、さまざまな脚色や改変を加えて全く別のイメージに仕上げた作品もあります。『ロミオとジュリエット』の悲恋は映画『ウエスト・サイド物語』に受け継がれ、『リチャード三世』は日本のファンタジー少女マンガ『薔薇王の葬列』の原案になっています。
物語に与えられた新たな魅力
すぐれた物語には繰り返し読みたい、見たい、聞きたいという欲求をかきたてる力があります。しかし時代が変われば価値観は変化し、原作そのままでは現代の感性や常識にそぐわないこともあります。そこで時代や社会に沿ったアレンジを加えて作品の新たな魅力を引き出す「語り直し」が行われるのです。
アダプテーションの定義は明確ではなく、続編やスピンオフ、パロディ作品をどうとらえるかも意見が分かれます。ただ、「この作品はもしやあの作品のアダプテーションかな?」と考えながら楽しむのも物語の醍醐味です。
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京都女子大学 文学部 英語文化コミュニケーション学科 教授 鴨川 啓信 先生
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