講義No.09435 建築学

地域の歴史を生かした、ずっと住めるまちづくり

地域の歴史を生かした、ずっと住めるまちづくり

地域によって民家の形は違う

世界遺産に登録されている岐阜県の白川郷は、急傾斜の大屋根をつけた合掌造りの民家が有名です。それは大量に降る雪を屋根から落ちやすくするための工夫なのです。一方、同じ豪雪地帯でも、新潟県内ではそれぞれの家が1階に「雁木(がんぎ)」という庇(ひさし)をつけて、雪が積もってもアーケードのようにその下を歩けるようにしています。このように地域特有の歴史や風土の中で、長年にわたる人々の営み、知恵や工夫が蓄積されてきた結晶が民家やまち並みです。

都市計画からまちづくりへ

人口増加を背景に全国一律に進められてきた都市計画は、まちの個性を失わせていきましたが、人口減少に入った現在は個性あるまちづくりを競う時代です。伝統的な建物で構成される歴史的なまち並みは、地域の個性を受け継いでいます。城を中心に武士や商人が住んだ「城下町」、旅人が行き交った街道沿いの「宿場町」、お寺や神社の参詣者でにぎわった「門前町」、海運で栄えた「港町」など、歴史と文化を伝えるまち並みを保全するために、国は「重要伝統的建造物群保存地区」制度を1975年に作りました。2018年の時点で全国118地区が選定され、一定の条件を満たせば改修や新増築に手厚い補助がなされます。こういった制度を活用しながら、それぞれのまち並みでは、住民たちによる個性を磨くまちづくりが進められています。

まちづくりは自分事

家や建物は、個人の所有物です。でも、その外観やまち並みは誰もが目にする公共財産です。個人でも景観に配慮して、緑を増やし、周囲になじむ建物を建てるなど、良好な景観づくりに努めることはできます。古民家をカフェにしたり、空きスペースでイベントをしたりして、活用することも可能です。古民家やまち並みを生かすことが地方を元気にする切り札になるのです。そのためには、住民自身が身近なまち並みやまちの歴史に興味を持ち、愛着を持って、まちをより良くする主体となることが重要です。あなた自身も、まちの物語をつくる主人公なのです。

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先生情報 / 大学情報

椙山女学園大学 情報社会学部 現代社会学科 ※2024年4月開設 准教授 今村 洋一 先生

椙山女学園大学 情報社会学部 現代社会学科 ※2024年4月開設 准教授 今村 洋一 先生

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まちづくり学、都市計画学、建築学

メッセージ

自分の家や部屋をきれいにしておきたいと思う人は多いでしょう。では、自分の「まち」はどうでしょうか?
「自分のまち」という意識を持たない人がほとんどかもしれません。ですが、「まち」は人がつくっているのです。「まち」は長い年月にわたる人の思いや物語を含んでいます。なぜこのような景観ができたのか、まちの歴史に興味を持ち、あなたが暮らす「まち」を「自分のもの」だと意識してみてください。そうすることで、故郷として愛着がわき、「まち」を楽しもう、「まち」をより良くしようという気持ちが芽生えるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

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「わたしは、五感を通して、社会課題と向き合う。」
メディア、観光、持続可能な社会の視点で、現代の社会課題と向き合い解決する力を。

現代社会学科では、メディア、観光・まちづくり、持続可能な社会をキーワードに、フィールドを重視した学びで地域社会が抱える課題と向き合い、その解決に向けて主体的に行動するための知識とスキルを修得。実践的な学びを通して社会を生き抜く判断力と行動力、そして情報活用能力を養います。