地域住民にも、観光客にも喜ばれる「まちづくり」の手法とは
観光地を再生するためにすべきことは?
全国各地の寂れた観光地の再興計画として、どんなプランが考えられるでしょうか? 「建築デザイン学」では、新しい建物を作ったり街並みの一部を変えたりすることで、「まちを元気にする」手法を研究します。しかし外観だけを新しくしても、そこに暮らす人々や観光客などに受け入れられなければ、手間とコストをかける意味がありません。十分な下調べや、住民からのヒアリングなどが必要なのです。
歴史や伝統を生かして観光客をひきつける
観光地再生の成功例として、佐賀県鹿島(かしま)市の「肥前浜宿(ひぜんはましゅく)」があります。ここは、有明海に面する漁師町で、長崎街道沿いの宿場町、佐賀平野の米を生かした醸造町として発展しましたが、少子高齢化と共に、建物の老朽化も進んでいました。
約20年前、まちの人たちが立ち上がり、古い酒蔵を生かしてイベント会場にしたほか、旧武家屋敷を修繕するなどで、酒蔵を中心としたまちづくりを推進しました。白壁の蔵や茅葺(かやぶ)き屋根の屋敷などが残っていることから、「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されました。通称「酒蔵通り」に、花や伝統工芸品の陶器を飾ったり、著名なピアニストを招いて酒蔵コンサートを開催したりして、話題作りにも力を入れました。その結果、恒例の観光イベントでは2日間で約9万人が訪れるなど、観光客ゼロのまちから春・秋の休日には多くの観光客が訪れるようになりました。
発想力と総合的な判断力でまちを元気にする
近年、地域の歴史や文化、自然を生かすまちづくりが進められています。また、新しい起業家を誘致したり、駅などの人が集まる地点を中心に新たな「にぎわいの場」を生み出すことも行われつつあります。
いずれにせよ、まちを元気にするには、まちのよさをどう引き出すか、住民ニーズをどのように反映させるか、観光地への集客の仕掛けをどうするかなどを、総合的に判断しなければなりません。そこが、建築・都市デザイン学の難しさであり、やりがいでもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 理工学部 理工学科 都市工学部門 教授 三島 伸雄 先生
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