過去を知ることで未来をつくる「建築の歴史」

過去を知ることで未来をつくる「建築の歴史」

過去のデザインに学ぶ「建築史学」

「建築史学」とは、当時の人の考えや社会的背景そして建物の様式から、建築の歴史をひもといていく学問です。例えば大学の講義で建築を勉強すれば、誰でもある程度のデザインは描けるようになります。しかし、真にオンリーワンな建物を産みたいならば歴史を学ぶことが大切です。自分では斬新と思っていても、過去に既に存在している場合があるからです。過去に立ち返ることで、新たな解決の糸口やデザインが見えてくることもあります。そして古くから現在まで残っているものは多くの人が意思を持って守ろうとした結果であり、古い町並みにも地域の歴史が詰まっています。地元の人でも気がつかない建物の価値を明らかにし、守っていくルールづくりも必要です。

江戸時代の町並みを保存するには?

福島県南会津の大内宿(おおうちじゅく)は、江戸時代に参勤交代の宿場町として成立しました。現在も江戸時代の面影そのままに、かやぶき屋根の民家が建ち並ぶ様子は珍しく、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。近年行った再調査では、すべての建物が同じ年代に建てられたものではなく、大きく4つの年代に分かれることが明らかになりました。それぞれの時代の様式に合わせた保存や修理の方法の検討が必要です。

最新テクノロジーと歴史

古いものを扱う建築史学ですが、積極的に最新のテクノロジーを取り入れた調査が行われています。先の大内宿の建物の見直し調査では、これまで行われてきた「放射性炭素年代測定法」の性能が以前より高くなり、建物が建てられた年代の判定の誤差が少なくなりました。そのほか3DCADによって建物を三次元で表現できるようになり、建物の検証や復原に応用されています。具体的には古い写真を元にして、3DCADで建造物を復原したところ、従来の手法では見えない、建築学的に不明確な問題が明らかになった事がありました。建築史学とは、建築と地域社会、過去と現在を結び、未来へと役立てることができる学問だといえるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

久留米工業大学 工学部 建築・設備工学科 准教授 成田 聖 先生

久留米工業大学 工学部 建築・設備工学科 准教授 成田 聖 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築史学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代、デザインやファインアートが好きで、「カッコいい建築家」になりたくて芸術工学部への進学を決意しました。学力的にはかなり厳しい状況でしたが、両親に頭を下げて1年間の浪人生活を送り、なんとか合格することができました。「何になりたいか?」と目標を明確にし、成功している姿から遡り今すべきことをおこなえば、受験は突破できます。それよりも重要なのは、大人や偏差値など他人の物差しではなく、自分の「人生」の方向を決めることです。そのために高校時代に仕事の種類や業界など、社会のことを知るべきだと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

久留米工業大学に関心を持ったあなたは

久留米工業大学は「人間味豊かな産業人の育成」を目指して、「実践的なものづくり教育」を進め、「ものづくりの楽しさ」を発信し続けています。さらに、ものづくりの実践教育の充実を図るため、ものづくりセンターを中心に、学科の垣根を越えて全学的な取り組みを実施しています。 本学は、小規模大学である特色を生かし、学生一人ひとりと教職員がお互いの顔がよく見えるアットホームな雰囲気の中できめ細かな教育を行い、実践的なものづくり能力を養成するための科目を多く設けています。