伝統的な建物を知るとまちづくりが見えてくる?
地域の特徴を踏まえながらまち並みを復元
伝統的なまち並みを再生する際は、対象となる建物の一部を解体しながら、オリジナルの部分を生かして補修・復元します。もともとの構造がよくわからない場合は、当時の写真や参考になる建物から類推してデザインします。地域の特徴を踏まえることも大事です。例えば、広島県竹原市の場合、出入口側の屋根が三角形に見える「妻入」の建物や、独特の格子が特徴です。島根県津和野町であれば、下から上へとせり上がる蝋燭(ろうそく)塀や赤茶色の石州瓦が特徴で、降雪の多い地域でもあるため雪用の水路を作り、それを生かした建物を考えていきます。
大事なのはデザインと居住性の兼ね合い
長く住み続けるには、居住性も大事です。観光に訪れた人が外観を見て、伝統的で素晴らしい建物だと感じても、居住者にとっては住みにくさの方が勝ってしまうこともあります。典型的な例が京都の町家で、いつも薄暗く、夏は暑く冬は底冷えすることから、現代風に建て替える人が続出しました。しかし、町家の断熱性や気密性を高め、吹き抜けと天窓を作り外部の光を入れるといったリノベーションを行うことで、住み続ける人も増えました。伝統的な建物の補修・復元というと、当時のままの作りにしなければいけないと考えられがちですが、今の材料や技術も組み込んで快適に暮らせるようにした方が、結果として建物の維持につなげやすいのです。
今後のまちづくりの在り方
行政としても、古い建造物は修繕し、再生してもらう方が望ましいのです。老朽化した建物は災害に弱く、災害で被害を受ければより巨額の復旧コストがかかることもあるからです。今後は環境への配慮や持続可能性も考えながら、まちづくりを進めていく必要があります。古材のリサイクルもその一つで、解体する建物の建具や木材をストックし、建物の修繕や復元、新築などに使う取り組みをしている地域もあります。その地に伝わる知恵や技の継承も含め、自分たちのまちをどう残していくのか、広い視野に立ち考えていく必要があるのです。
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