使う人の声を拾い上げ、建築の言葉に翻訳する「建築計画」
「建築計画」の役割とは
良い建築というのは、単に見た目のデザインが優れていることを指すのではなく、住みやすく使いやすいことこそが大切な指標です。そのためには、できるだけ早い段階から実際に建物を使う人と一緒になって、形状や面積などの設計の判断基準が妥当かを検討していく必要があります。建物を使う人の意見を設計要件として翻訳し、建物を作る人に橋渡しする役割を、建築計画という分野が担っています。
ワークショップの開催
建物を使う人が発言力や経済力を持つ人なら、自分で意見を述べて、自分の思うような建築を実現させることができます。しかし、高齢者や障害者、子どもなどの社会的に弱い立場にある人たちの意見は埋もれがちであるため、誰かが間に入って拾い上げなければなりません。
例えば、古い団地の建替え事業では、新規の入居者と建替え前から住んでいた再入居者が混在することになります。新規入居者は若いファミリー層が想定される一方で、再入居者は長く住み続けている高齢者も少なくありません。そのため、このような建替え計画では、新築とは違った設計が必要です。実際に行われた建替え事業では、建築計画の研究者が参加し、アンケート調査やワークショップなどで再入居者の声を拾い上げました。ワークショップの良さは、用意した模型などの資料を見ながら議論が進められ、個人的な意見もグループとしての共通意見に昇華されていく点です。使う人や住む人と作る人の意見が交換されて、折り合ったり、今まで気がつかなかった新しい価値を見つけたりすることが、建築計画の研究の最前線と言えるでしょう。
良い建築のために
このように設計のプロセスをていねいにデザインしていけば、結果的に良い建築ができるはずです。しかし、非常に時間も手間もかかる作業のため、実際にそこまでの手順を踏んで作られた建築は多くありません。そういう建築が増えて、良い建物として認知されるようになっていけば、設計のプロセスへの再評価が進んでいくものと期待されます。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 都市科学部 建築学科 教授 藤岡 泰寛 先生
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