誰ひとり取り残さない「インクルーシブ防災」の実現に向けて
インクルーシブ防災ってなに?
インクルーシブ防災とは、障害者や高齢者を含む、あらゆる人を取り残さない防災という考え方です。東日本大震災では、震災で亡くなった人の6割以上が60歳以上の高齢者、さらに障害のある人の死亡率は、住民全体の2倍だったと言われています。高齢者施設における逃げ遅れや避難所での災害関連死……災害が発生すると、配慮や支援が必要だった人々に被害が集中するのはなぜでしょうか? 迫りくる大規模災害に備えて、様々な専門分野の人が知恵を出し合って、この難題を解決しなければなりません。
過去の災害から教訓を得ることが大切
例えば台風による浸水被害を受けた高齢者施設を対象にした調査では、当時の雨の量や川の水位、浸水がどのように発生し広がって行ったのか、避難情報が発表された時間、建物や設備の被害状況、どのように避難をしたのかなどの情報を分析することによって、逃げ遅れを防ぐためのポイントを見つけ出すことができます。ポイントが分かれば、それをほかの福祉施設の避難計画や訓練に活かすことができます。分析において、どのようにして災害が発生したのかを検証するには自然災害科学の視点、なぜ逃げ遅れたのかを検証するには社会科学の視点が役立ちます。
避難所の環境を良くするには
「災害関連死」という言葉を知っていますか? 災害発生から避難所へたどり着いても、慣れない避難生活でのストレスによる持病の悪化など様々な要因が重なって命を落とす「災害関連死」が起きる可能性があります。劣悪な避難所生活で影響を受けやすいのは高齢者や障害者、妊産婦や乳幼児などです。避難所は学校の体育館や公民館などの公共施設が利用されることが多いですが、民間のホテルや旅館の利用も少しづつ増えてきています。公共施設の防災機能の強化や民間施設の積極活用など、避難所の環境改善が急務です。また、居住スペース不足や設備面の問題だけでなく、プライバシーへの配慮や女性やこどもに対する犯罪防止も重要であり、防災分野における女性の視点が求められています。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 社会基盤デザインコース 講師 金井 純子 先生
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