進歩を続ける義足が、障がいがある人や高齢者の可能性を広げる
陸上競技が可能な義足に
日本で義足が発達したのは、第二次世界大戦後のことです。戦争で足を切断した傷痍(しょうい)軍人たちが、日常生活のために義足をつけるようになったのです。さらに1990年代には、高い負荷に耐え得る義足が開発され、義足を装着して運動することも可能になりました。大阪府のある義肢装具製作会社では、ランニング用義足で走りたい人々の身体能力に合わせて、個々に適した走り方のテクニックを指導しました。機能的に高い義足を使いこなすには、ただ装着するだけでなく、そのための能力が必要となるのです。
パラアスリートが健常者の記録を超える
そもそも、理学療法は基本動作を獲得することが目的で、その中に「走る」という動作は含まれていませんでした。また、昔は義足をつけて走ることは、ケガをする危険性があることからタブー視されていました。しかし、義足の進歩と適切な指導の相乗効果で、足を切断した人もスポーツを楽しみ、競技スポーツに挑戦できるようになりました。結果、パラアスリートの記録も伸び、走り幅跳びでは義足をつけたアスリートが健常者の日本記録を上回るほどになりました。また、足をなくした子どもも、体育の授業を受けたりサッカーを楽しんだりできるようになり、身体に障がいがある人の可能性が広がっています。
高齢者に義足を適用する意味
義足の適用を、血行障がいで足を切断した高齢者にも広げるための研究も行われています。血管の病気で片足を切断した人の多くは車椅子を利用するため、運動負荷がかからなくなり、もう片方の足も悪くなりがちです。片足を切断すると、5年以内にもう片足を切断するケースもあります。そうならないためにも、義足をつける重要性を証明するエビデンス(根拠)の探究が必要とされています。足は「第二の心臓」と言われています。片足だけでも使うことができれば健康維持にも効果があり、諦めていたことができるようになると期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪人間科学大学 保健医療学部 理学療法学科 教授 長倉 裕二 先生
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