あなたならどうする? 出生前診断ー意思決定支援と看護ー
女性の生涯を支える母性看護学
母性看護学は、女性の生涯の健康を支える学問分野です。一般的には妊娠・分娩・産褥(さんじょく)期の女性の看護を指すと思われがちですが、実際には出生してから老年期に至るまでの女性の一生の健康を支援します。さらに、女性だけでなく、その子どもやパートナー、家族、地域社会も対象に含みます。
女性の高学歴化、社会進出が高まり、それとともに高齢出産が増加しています。出産年齢が上がることで、赤ちゃんが染色体異常で産まれるリスクが高まります。妊娠中にお腹の中の赤ちゃんの形態や染色体の異常を調べる出生前診断を受けるか否かで悩む母親と夫が増えています。
出生前診断を受けるか否かを迷う
出生前診断のメリットは、異常が見つかった場合に妊娠の継続や治療方針を検討するための情報が得られることです。デメリットは、費用的な負担や、流産・早産のリスクがあることです。さらに、結果を知ることで混乱したり、検査でわからない病気もあることや、命の選別という倫理的な問題もあります。
出生前診断を受けるか否かを決める際に、母親と夫や家族との意見が一致しない時に、母親が葛藤するケースも少なくありません。出生前診断を受ける人は増加していますが、超音波検査や血液検査で異常があった場合、確定診断を受ける前に、妊娠を断念する人が増えており、社会問題になっています。
母親の意思決定を支援する
出生前診断を受けるか否かを決める際には、正確な情報を母親が持ち、それに基づいて納得した選択をできることが極めて重要です。母性看護学では、母親の意思決定を支援する研究が進められています。インタビューやアンケート調査から、母親だけでなくパートナーである夫も、情報が不足していることが明らかになりました。現在、母親と夫を対象として、母親の心のケアを含む総合的なサポートを行うための研究が進行中です。研究成果は、医師や遺伝カウンセラーといった遺伝の専門家と共同しておこなう意思決定支援システムの構築や普及に活用されています。
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