病院内の膨大なデータを有効活用するためのシステム
医療情報システム開発の変遷
医療情報システムの開発において、20世紀には保険計算などの医療会計を電算化することで、事務手続きの効率化が実現できました。21世紀にかけては、MRI(磁気共鳴画像)写真やX線写真などの画像や動画データを管理して、病院内ネットワークで流通させるシステムが充実し、医師の診断や診察が効率的に行われるようになりました。現在は、病院内の種々の膨大なデータをいかに保管して活用するかが、主要な研究開発テーマとなっています。
複数のデータベースを横断的に統合
大規模病院では、患者のカルテはもちろん、医師の指示出しや医療スタッフの指示受けのデータ、医療機器による検査データ、看護師が情報端末で入力する患者データなど、さまざまなデータがあります。しかし、これらはそれぞれ独立したデータベースとして存在していて、これら複数のデータベースを結びつけながら、患者や医療スタッフの様子をさまざまな角度から分析できるようにすることは、今でも大きな課題となっています。そこで、時間を軸に複数のデータベースを横断的に統合する研究が行われています。新たに統合するためのデータベース言語を開発することにより、時間的に変化する病院内での出来事を数量的にグラフ化できるようにして、より精緻(せいち)に患者の状態や医療スタッフの行動を把握しようとしているのです。
ナースコールデータを生かす
例えば、ナースコールの頻度は患者の状態を知るための有効なデータですが、ナースコールに関するデータは膨大なので、問題になりそうな変化をくまなく見つけることは困難でした。しかし新しいシステムではナースコールの頻度に関する変化が自動的に検出されるので、少しの変化も見逃さないようになります。
また、このシステムは労務管理にも役立ちます。ナースコールの頻度とそれに対する医療行為を結びつけることで、看護師の負担の規模を推定したり予想したりすることができます。これによってスタッフの増員を行うなど、看護師の労働環境の改善にも貢献するのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
群馬大学 情報学部 情報学科 准教授 高木 理 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
医療情報学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?