赤ちゃんのように学ぶロボットを実現するには?
ロボットをより賢く
実用化されている多くのロボットは、恒常的な環境の中で、機械の組み立てといった繰り返し作業を精密かつ高速に行います。しかし、未知の環境や条件のゆらぎに対しては柔軟に対応できません。柔らかな袋の中から部品を取り出すことさえ難しいのが現状です。ロボットが自ら状況を判断して、それに応じた行動が取れれば、より広範な作業をロボットに任せられるようになります。
鍵になるのは「可制御性」
ロボットに動作を学習させる方法には、手本になる動作をたくさん教えたり、ロボットの動作の出来具合を評価して、その評価の高い動作に近づけさせたりする方法があります。これらの方法には、十分な手本を用意できるか、用意するためのコストが高すぎないか、手本や評価がほんとうに適切なのかといった問題があります。
そこで、人間に頼らずに、ロボットが試行錯誤を繰り返して学習する方法が研究されています。その一つが、ある状態から別の状態に有限時間内に移動させられるか否かという「可制御性」を手がかりにする方法です。この方法を用いて、真横には移動できない2輪型移動ロボットに、横位置への移動方法を自ら見つけ出させる実験が行われました。その結果、センサの種類・性質などの情報を与えられなくとも、試行錯誤を繰り返すことで目的地に到達できるようになりました。この技術をさまざまなタイプのロボットに応用して、より汎用性の高い適応力を持つロボットの実現が期待されています。
人間の学習プロセス解明にも貢献
人間の赤ちゃんは、周囲の環境を探索して試行錯誤を繰り返すことで、徐々に世界を理解して、行動を身につけていきます。可制御性を手掛かりにして、ロボットにも同様の学習プロセスを踏ませられるかもしれません。その研究は、ロボット工学の発展に寄与するだけでなく、人間の学習プロセスを理解する手がかりにもなります。私たちが無意識に行っている環境理解や行動獲得のメカニズムを、ロボットを通して明らかにする可能性があるのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 機械工学科 准教授 小林 祐一 先生
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