講義No.10570 薬学 医学

新型コロナウイルスを「人工合成」し、治療薬開発へ

新型コロナウイルスを「人工合成」し、治療薬開発へ

そもそもウイルスって何?

新型コロナウイルスの感染が世界中に広がりました。そもそも、ウイルスとはなんなのでしょうか。ウイルスは、タンパク質の殻とその中に入っている遺伝子情報からなる構造体です。ウイルスだけで増えることはできず、動物や人間の細胞に入り込むことで増殖します。ウイルスが増えると、体内の免疫などがウイルスを制圧しようとします。それから逃げようと、ウイルスはまた細胞に入り込みます。このような繰り返しでウイルスは増えていくのです。コロナウイルス自体は、これまでにも自然界に数種類あることが知られていました。新型コロナウイルスも突然現れたわけではなく、以前から動物の体内にあったものが、なんらかのきっかけで人間の世界に入りこんだと考えられています。

新型コロナウイルスを「人工合成」する

新型コロナウイルスの感染を防ぐために、ワクチンや治療薬の開発が必要です。そのために求められるのがウイルスの増殖機構解明であり、新型コロナウイルスを「人工合成」する取り組みです。新型コロナウイルスには遺伝子の長さが3万個あると言われており、その遺伝子情報を同じ順番で同じようにつなぎ合わせて、人工的に創り出すのです。人工合成が成功すれば、ウイルスの感染や増殖を再現し、病原性が発生する仕組みを解明することが可能です。それができれば、ワクチンや治療薬の開発が一気に加速します。

ポストコロナ時代のカギはウイルス研究の継続

今後、新型コロナウイルスの研究は進み、さまざまなことが明らかになっていくでしょう。これは、コロナだけでなくほかのウイルスが発生した時にも重要な情報となります。2002年に発生したSARS(サーズ)は、新型コロナウイルスと非常によく似たウイルスでした。しかし、短期間で感染が収まったため、その後の研究は十分に続けられておらず、その後の状況にうまく生かされていない面があります。ウイルスの基礎研究を継続していくことは、ポストコロナ時代にますます重要になるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

群馬大学 医学部 医学科 教授 神谷 亘 先生

群馬大学 医学部 医学科 教授 神谷 亘 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

医学、獣医学、ウイルス学、生体防御学

先生が目指すSDGs

メッセージ

ウイルスの研究には終わりがありません。何か成果を見出しても、また新しい疑問が湧き、それを解決しようと研究に取り組む、この繰り返しです。自分自身の中から湧き出る知的好奇心を追究するのはとても楽しいことですから、あなたにはぜひ、好きなことを見つけてほしいです。
好きなことは、頭で考えるだけでわかるものではなく、実際に手を動かしたり行動したりして初めて気づくものです。もし、何かに少しでも興味を感じたら、情報を取りにいくなり、その世界を体験するなり、実際に体を動かしてみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

群馬大学に関心を持ったあなたは

群馬大学は北関東を代表する総合大学として、優れた人材を育成し、学問の研究と応用、福祉への貢献など、社会的使命を果たすことを特色としています。「社会のニーズに配慮しつつ細分化から総合化へ」という理念を研究面、及び教育面に具体的に実現させ、「研究活動面における社会との連携及び協力」に高く評価される形となって生かされています。