新型コロナウイルスを「人工合成」し、治療薬開発へ
そもそもウイルスって何?
新型コロナウイルスの感染が世界中に広がりました。そもそも、ウイルスとはなんなのでしょうか。ウイルスは、タンパク質の殻とその中に入っている遺伝子情報からなる構造体です。ウイルスだけで増えることはできず、動物や人間の細胞に入り込むことで増殖します。ウイルスが増えると、体内の免疫などがウイルスを制圧しようとします。それから逃げようと、ウイルスはまた細胞に入り込みます。このような繰り返しでウイルスは増えていくのです。コロナウイルス自体は、これまでにも自然界に数種類あることが知られていました。新型コロナウイルスも突然現れたわけではなく、以前から動物の体内にあったものが、なんらかのきっかけで人間の世界に入りこんだと考えられています。
新型コロナウイルスを「人工合成」する
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、ワクチンや治療薬の開発が必要です。そのために求められるのがウイルスの増殖機構解明であり、新型コロナウイルスを「人工合成」する取り組みです。新型コロナウイルスには遺伝子の長さが3万個あると言われており、その遺伝子情報を同じ順番で同じようにつなぎ合わせて、人工的に創り出すのです。人工合成が成功すれば、ウイルスの感染や増殖を再現し、病原性が発生する仕組みを解明することが可能です。それができれば、ワクチンや治療薬の開発が一気に加速します。
ポストコロナ時代のカギはウイルス研究の継続
今後、新型コロナウイルスの研究は進み、さまざまなことが明らかになっていくでしょう。これは、コロナだけでなくほかのウイルスが発生した時にも重要な情報となります。2002年に発生したSARS(サーズ)は、新型コロナウイルスと非常によく似たウイルスでした。しかし、短期間で感染が収まったため、その後の研究は十分に続けられておらず、その後の状況にうまく生かされていない面があります。ウイルスの基礎研究を継続していくことは、ポストコロナ時代にますます重要になるでしょう。
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群馬大学 医学部 医学科 教授 神谷 亘 先生
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