人の心理に寄りそった管理会計で利益アップ
「自己効力感」を高めて利益をアップ
心理学において「自己効力感」という概念があります。これは、「私はやればできる」という信念のようなものです。これがあれば、人は困難な課題にも粘り強くチャレンジするようになると言われています。そのため、ビジネスの場において自己効力感を高めることは、利益を高めるうえで重要です。この効力感は、成功体験を積み重ねることによって得られます。
日々の成果を利益に換算
しかし、職種によっては「成功」を感じにくい場合があります。そこで、働く人々を5~10人くらいの小集団に分けます。そして、社内での仕事のやり取りを売り買いに見立て、企業によっては社内でのみ通用する架空の通貨を用い、そのチームごとに売上を計上し、かかった費用を計算し、どれくらい儲かったかを算定します。この「儲け」のことを利益と言いますが、チームが利益を増やせば、自分の会社に貢献したことになりますので、自分たちがどれだけ成功したのか、目に見えてわかるようになります。この計算を毎日行うので、日々成功したかどうかがすぐにわかります。そして、その日得られた利益を働いた人の時間で割るので、そのチームが1時間にいくら稼いだかもわかります。時間ごとに細分化された金額になればなるほど、成功の実感が湧きやすくなり、効力感を得られやすくなります。また、失敗したら何が原因だったのかすぐに判断できるので、即座に行動を是正することにつながります。
ほどよい競争心と助けあい
また、チームごとに1時間で稼いだ金額を比較できるようにすれば、成功や失敗を客観的に判断することができるようになり、もっとがんばろうという気持ちを引き出すこともできます。さらに、このシステムは時短勤務で働く人々にも好都合です。事情があって早く帰らなければならないとき、仕事を任せる人に架空の通貨を渡すことによって、負い目を感じることなく帰ることができます。
実際の労働現場に適用するには微調整が必要ですが、このシステムは社内の風通しをよくすることにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
中央大学 商学部 会計学科 教授 渡辺 岳夫 先生
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