社会の変化がもたらす新たな問題に法律はどう対応するか
専門家の力を借りて刑法を作る
2018年、中国で世界初となるゲノム(遺伝子)編集された双子の赤ちゃんが誕生したと発表され、安全や倫理などさまざまな面での危険性が指摘されました。このほかにも、私たちの社会には日々新しい問題が発生しており、中には既存のルールでは対応できないものも多く含まれます。
刑法の分野では、こうした問題に対して新たな罰則を定め、法規制によって問題に対処していきます。最先端の医療や科学分野の問題は法律家だけでは判断が難しく、世論も形成されにくいため、その分野の専門家を「審議会」という場に招き、専門的な知識や意見を取り入れながら、新しい法律を作っていきます。
法律ができるまでのプロセス
刑法の審議会は、法務省や警察庁が担当することが一般的ですが、経済スパイのような問題は経済産業省が、科学技術に関する問題は文部科学省が担当することもあります。また、人の胚に関する問題のように生殖補助医療と密接に関係しているケースでは、民法の中の家族法の専門家が参加し、行政による承認をもって規制する場合は、行政法の専門家が参加します。こうした専門家による審議の結果が内閣に提出され、それをもとに内閣提出法案が作られ、国会で可決された後で法律として施行されます。
社会の先頭でルール作りに参画
新たな法律は日々作られていきますが、法律は一度作れば普遍的に通用するというものではありません。特に最先端科学のような分野では、科学技術の発展にともなって新たな議論が生まれるため、規制となる対象や罰則も更新され続けなければならないのです。
法学というと、過去に作られた法律や裁判例を覚えるというイメージがあるかもしれませんが、基本となる考え方を理解した後は、新たな問題に対処する思考が不可欠です。決してきれいごとでは済まされない部分に目を向けていくことも多くあり、大変なこともありますが、法学はいわば社会の先頭に立ってルール作りに参画する学問分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 法学部 教授 髙山 佳奈子 先生
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