地下水が全滅する!? ~水質悪化と改善のメカニズム~

地下水が全滅する!? ~水質悪化と改善のメカニズム~

赤水・無酸素・臭い……いま地下水が危ない!

家で使う水道水や工業用水などに、地下水はどれくらいの割合で使われていると思いますか? 川が身近な日本では、川が水源というイメージかもしれませんが、北陸地方や南九州では約半分、関東内陸部や東海・山陰地方では約4割、近畿の内陸部でも約3割というように地域差はありますが、日本では地下水は水源として大きなウェイトを占めています。しかし地下水、特に一般家庭で使うような浅い層からくみ出す地下水で、「鉄分を含んだ赤水に変わる」「淡水魚の養殖にダメージを与える無酸素状態になる」「臭いがひどくなる」など、地域によっては「地下水が全滅する」と言ってもよいような問題が近年起こっているのです。

地下水の水質悪化の3つの原因

きれいで酸素も豊富だった地下水の水質が変わった原因は3つあります。
1つ目は、地下水の涵養(かんよう)源である大きな河川に下水処理水などが排出され、ある程度有機物の量が増えてしまうことで土中の微生物が活発になり、水中の酸素をほとんど消費してしまい無酸素状態になった水が浸透していくことです。次は、地下水の使い過ぎです。使い過ぎによって本来は入らなかった河川からの水が地下に入ることになりますが、その水が無酸素だと土壌粒子中の鉄分などの金属類が溶け込みやすくなり、赤水や臭いのある水になるのです。3つ目は、より汚濁した川の水の浸透です。

メカニズムを知ってトータルな管理・改善を

実は、同じ現象が世界中で起こっていそうなのです。水の確保は地球規模の課題でもあり、地下水の水質悪化はますます重要な研究テーマになるでしょう。
「環境工学」では、地下水と河川水の流れのシミュレーションで流れを計算し、実際の水質調査結果と合わせることで地下水の水質悪化のメカニズムを解明します。このメカニズムを考慮した上で、双方にある原因への対策をとることが重要で、日本でも地下水と河川をトータルで管理・改善する法制度へ変わりつつあります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 米田 稔 先生

京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 米田 稔 先生

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環境工学、都市環境工学、環境リスク工学

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メッセージ

あなたが、自然保護や環境保全をテーマにした勉強をして、エンジニアになりたいという気持ちを持っているなら、まず、基礎の勉強が大事です。基礎の積み重ねは地味に思えるかもしれませんが、土台がなければ応用することもできません。自分の目標を明確に持てば、取り組んでいる数学や物理などが、どう役に立つのかが見えてくるでしょう。
また、「環境」は非常に幅広い分野なので、日本や世界で起こっていることに関心を持ってください。一見関係ないと思えるような分野の本なども読んで、視野を広げてほしいと思います。

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京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。