行政組織が市民のためにより役立つように
行政組織をより透明に民主的に
行政学は、政治学の一分野で、公務員の集団がどのように活動しているのか、行政組織をどうすれば市民の役に立つように動かすことができるかを研究する学問です。その目的は、行政という組織をより市民のために役立つように、より透明に、より民主的なものにしていくことです。
行政学の中で、政策が実施されている現場を対象とするのが、政策実施研究です。国が作った法律が地域の現場でどのように実施されているかを調査し、共通の課題や現場の創意工夫などを発見します。そこから、国と現場との認識のすり合わせや現場の知恵の共有、解決策の提案を進めていきます。
一つの現場の知恵が全国へ
行政の現場では、少ない予算と人員でより良い仕事をしようと知恵を絞り、工夫を講じています。そういった現場の知恵の中には、日本だけでなく、世界の行政にとっても役立つような普遍的な取り組みもあります。調査を通じて、その現場だけに留まっている知恵を発見することがあります。
一つの児童相談所の取り組みが全国に広がった例に「48時間ルール」と呼ばれるものがあります。「虐待通告受理後、原則48時間以内に児童相談所や関係機関において、直接子どもの様子を確認するなど安全確認を実施する」というルールです。このルールを最初に定め、実行したのは埼玉県の一つの児童相談所でした。1999年にその取り組みが埼玉県全体に広がり、2007年に厚生労働省が児童相談所運営指針を改正し、全国的なルールになりました。
簡単な答えのない問題
行政学が扱う問題は、簡単に答えが見つかるものではありません。地域によって事情が異なりますし、市民の考えも多様です。児童虐待についても、すべての市民が同じ考えを持っているわけではありません。そのような問題でも、丁寧に調べ、じっくり考えることで、前進させることができます。問題を抱えて苦しんでいる市民の方にも、実際に問題解決に取り組んでいる実務家の方にも「役に立った」と言ってもらえる、やりがいのある研究分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
専修大学 法学部 政治学科 教授 鈴木 潔 先生
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