歯ぐきや骨を薬で再生! ~世界初の歯周組織再生技術~
一度失った歯ぐきや骨は自分では取り戻せない
歯周病とは、口の中の細菌によって歯ぐきが炎症を起こす病気です。進行すると歯ぐきや歯を支える骨が破壊されてしまいます。細菌を取り除くことで病気の進行は止まりますが、失われた歯ぐきや骨を自分の力で取り戻すことはできません。そのため、最悪の場合は歯を失うことになります。しかし、それでも歯ぐきや骨といった歯周組織を作る元となる細胞である幹細胞は残っています。そこで、なんらかの方法で幹細胞の働きを活性化することができれば、元の状態を取り戻すことができます。
歯周組織を再生させる薬
歯と骨の間にはコラーゲンの線維層があります。これを歯根膜といいますが、幹細胞はここに眠っています。例えば、歯の並びをきれいにする矯正治療というものがあります。この治療では歯を倒したり、引っ張ったりしますが、この過程で倒された側の歯根膜は骨を吸収し、引っ張られた側は骨を作ります。ここで働いているのが、骨の形成や吸収に関わる細胞です。人為的にこのような細胞をもっと活性化できれば、歯周組織が再生されるはずです。実は、このような薬はすでに開発されており、治療に使われています。この薬(成長因子)は、幹細胞を活性化して幹細胞を増やし、新しい血管を作り組織の再生を促す機能があります。ですからこの薬を患部に投与すれば、元の歯周組織を再生させることができるわけです。
人々のQOLを高める歯学研究
再生治療というとiPS細胞による治療が知られていますが、薬で組織を再生させるのは世界初の研究成果です。研究はさらに進んでいて、幹細胞が乏しい人のために、骨髄や脂肪組織の中にある幹細胞を抽出して患部に移植する治療技術が研究されています。
歯の再生治療の発達によって、入れ歯やインプラントなどの治療を行わなくても、自分の歯で生活できるようになるでしょう。高齢化が進む中で、人のQOL(生活の質)を高めることは重要なテーマです。その意味で歯学研究は重要な役割を果たしています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪大学 歯学部 口腔治療学講座 教授 村上 伸也 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
歯周病学、歯学、再生医学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?