虫歯の治療だけではない! 骨の移植にも取り組む歯学
歯科で骨を移植?
歯科は虫歯を治すイメージが強いかもしれませんが、それ以外の治療にも幅広く取り組む分野です。義歯を入れたり、インプラント治療や親知らずの抜歯をしたり、リハビリをしたりなど、さまざまな技術や知識を持つ口腔の専門家がいます。顎(あご)に骨を移植するという、大がかりな手術も行います。
顎の腫瘍を取り除くには
骨を移植する再建手術は、例えばエナメル上皮腫(じょうひしゅ)という疾患のような、顎の骨の中に腫瘍(しゅよう)ができたときに行われます。腫瘍のほとんどは良性ですが、中には腫瘍が大きくなって患者の生活に支障が出る場合もあります。腫瘍を取り除く方法は外科手術しかなく、周りにある顎の骨ごと切り取らなければなりません。すると残った骨の位置がずれ、かみ合わせが悪くなったり神経がマヒしたりします。
こうした影響を抑える方法のひとつが、肩甲骨などの身体の別の部分から骨を持ってきて顎に移植する再建手術です。ただし、形の異なる骨や周囲の皮膚を使うため、顔の形が変わってしまうかもしれません。また、噛む機能や歯並びなどにも影響が及びます。患者が手術前と変わらない生活ができるよう、歯の専門家と口腔機能の専門家が協力して適切な移植位置などを検討しています。
患者の生活を守るために
顎の骨の腫瘍を治療する際、その部位で噛めるまでに年単位で時間がかかります。術後もすぐにもとの生活に戻れるわけではなく、噛む力が衰える、顎が使いにくくなるなどの影響が出ます。そこで治療期間を短縮するための研究が始まりました。
例えば手術前に義歯を作る手法です。顎の骨を切除すると周りの歯もなくなってしまうため、手術後には義歯が必要になります。通常は顎の形に合わせて術後に義歯を作りますが、すぐに歯がある生活に戻れるよう、あらかじめ作成した義歯が入る形で骨を移植するのです。ただし、どれだけ気をつけても術後は顎の骨の形が多少は変わってしまい、義歯が安定しにくくなるため、さらなる研究や実践が求められています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 歯学部 顎口腔腫瘍外科学講座 教授 鵜澤 成一 先生
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