薬の陰にフッ素あり
生物活性を高めるフッ素
現在、販売されている医薬品のうちの20%に、農薬では40%にはフッ素原子が含まれていると言われています。ここ最近、世界中でもっとも売れている医薬品は脂質異常症やコレステロールをおさえる薬ですが、その薬にもフッ素が含まれいます。フッ素というと、歯医者さんで歯に塗ってもらった経験のある人も多いかと思いますが、実はこのように私たちの身の回りのいたるところで使われているのです。薬の場合には、フッ素を入れると薬の作用が高くなると言われています。しかし、このフッ素を思い通りに薬の分子配列中に組み込むのは、そう簡単ではありません。今、この問題解決に熱中しているところです。
フロンガスとテフロン
フッ素が一躍脚光を浴びたのが、1928年のフロンガスの発見と1938年のポリテトラフルオロエチレンの発見です。ポリテトラフルオロエチレンでは何のことかわかりにくいですが、フライパンなどの加工に使用している「テフロン」のことです。また、フロンガスには、何種類かありますが一般的には、クロロフルオロカーボン (CFC)を指します。このCFCはフッ素と、炭素、水素、塩素などからなる化合物で、化学的に非常に安定していたため、冷媒として、冷蔵庫やエアコンに使用し、溶剤、発泡剤、エアゾール噴霧剤などにも使用されていました。この非常に安定した性質が災いし、塩素を含んだまま成層圏まで到達しました。通常塩素は酸化しやすく、成層圏まで上がることはないのですが、フロンガスが安定しすぎているために、成層圏にたどり着いてしまったわけです。そこで強力な紫外線の影響を受けて塩素が切り離されて、不安定な塩素ラジカルになります。塩素ラジカルはオゾンを破壊してしまうのです。その結果、1995年にCFCは生産中止となってしまったのです。良くも悪くもフッ素って身近な物質です。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 生命・物質化学分野 教授 柴田 哲男 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?