アルツハイマー病の解明へ! 原因物質「タウ」異常化のメカニズム
アミロイドβとタウが引き起こす
日本では約500万人の認知症患者がいると言われており、その約7割がアルツハイマー病です。アルツハイマー病は、加齢に伴って脳に「アミロイドβ」という物質がたまり、その後、神経細胞の中の「タウ」というタンパク質が異常を起こして脳細胞がダメージを受けるという順序で発症することがわかっています。
最初にダメージを受けやすいのが「海馬」という記憶をつかさどる部位で、例えば「今、ご飯を食べた」などの新しい出来事を記憶できないという症状から始まり、ダメージがほかの部位に広がると、古い記憶を失う、計算ができないなど、症状が進行していきます。
新薬はアミロイドβを抑える薬
アミロイドβがたまった部分は「老人斑」と呼ばれ、病理診断では脳のシミのように見えます。これだけでは何の症状もありませんが、現段階では、アミロイドβの蓄積が、タウが異常を起こしやすい環境を作っていると考えられています。
病気の源であるアミロイドβの研究は盛んに行われてきました。2023年に承認されたアルツハイマー病の新薬は、このアミロイドβに働きかけて病気の進行を止めるものです。
特定のタンパク質と結びつく
一方、今注目されているのが、症状の「はじまり」に関わるタウの異常に着目した研究です。神経細胞は、細胞核のある「細胞体」から「樹状突起」や「軸索」と呼ばれる枝が出ています。正常なタウは軸索に存在して一定の役割を担っているのですが、異常なタウは樹状突起や細胞体にあることがわかっています。そして最新の研究では、健康な状態では、タウには別のタンパク質がくっついていることがわかり、そのタンパク質もいくつか特定されました。この結合しているタンパク質が外れると異常を起こすのではないかという仮定のもとで、マウスを使った実験などで検証が行われています。
タウが異常を起こすメカニズムが解明できれば、アルツハイマー病の発症そのものを抑える薬の開発につながると期待されています。
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日本大学 薬学部 薬学科 教授 宮坂 知宏 先生
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