水との境界では、プラスチックの表面が溶けている!?

水との境界では、プラスチックの表面が溶けている!?

高分子は、ゆでたパスタ?

プラスチックは、分子(モノマー)が長くつながった鎖状の高分子(ポリマー)で構成されています。ペットボトルも輪ゴムも同じプラスチックですが、室温によって軟らかくなるかどうかで、違いが出ます。また、プラスチックを長年放置しておくと、変色してもろくなるのは、紫外線の光エネルギーやほかの条件によって、分子の鎖が切れてしまうからです。
高分子は、ゆでたパスタのように曲がりながら動いていて、ほかの物質や空気に接している面「界面」と、何にも接していない内部では、その動き方が違うことがわかっています。

プラスチックの表面は水に溶ける?

高分子は、固体などに接しているときはひしゃげた状態で、あまり身動きがとれません。その材質がザラザラしているか、ツルツルしているかによっても、動き方は変わります。一方、空気に接している界面では、比較的、自由に動けます。
では、水に接している場合はどうでしょう? 研究の結果、プラスチックのナノ単位(100万分の1mm)の表面で、分子の鎖がゆらゆらと動いていることがわかりました。つまり、水に部分的に溶け出していたのです。通常、高分子を直接見ることはできませんが、中性子線による散乱現象や赤外線分光などを利用することで、総合的に判断できるのです。

水族館の水槽とコンタクトレンズの工夫

では、プラスチックの一種、アクリル樹脂でできた水族館の水槽の界面はどうでしょうか? 水槽の界面では分子同士をつなぐ手を2本から4本に増やすなど、構造をより強くして溶け出しにくくしてあります。これを「架橋」構造といいます。同じプラスチックのコンタクトレンズの場合は、内部は形を保つように架橋構造にしていますが、直接目や空気にふれる界面は、架橋の密度を低くして、より水分となじむように工夫されています。
このように界面に注目することで、生体に適合しやすい材料、製品の品質や安全性を高める材料など、さまざまな材料を作り出すことができるのです。

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先生情報 / 大学情報

三重大学 工学部 総合工学科 応用化学コース 准教授 藤井 義久 先生

三重大学 工学部 総合工学科 応用化学コース 准教授 藤井 義久 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

高分子化学、有機素材化学、界面科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

化学というと、試薬を混ぜて色が変わる化学反応や、原子や分子をつなげて新しい物質を合成するイメージが強いかもしれませんが、応用化学はもっと幅広い学問領域で形成されています。私はその中でも有機素材化学を専門に、表面や界面、薄膜といったナノスケール空間に束縛された高分子の構造や物性がどのように変化するかについて、研究しています。
実は、研究は宝探しに似ていて、目の前にある答え(科学の法則)を発見できるかどうかなのです。あなたも有機素材化学を追究し、豊かで快適な社会を一緒に「作って」いきませんか。

先生への質問

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三重大学は、5学部を擁する総合大学です。教育・研究の実績と伝統を踏まえ、「人類福祉の増進」「自然の中での人類の共生」「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となるべく、切磋琢磨しています。