より発光する材料を作れ! 新たな素材を生み出す有機化合物研究
新たな素材を開発する
スマートフォンの画面に使われる有機ELなど、現代社会では機能性有機材料の実用化が進んできました。有機ELには発光機能に特化した有機化合物が使われています。このような機能性有機化合物は特定の目的のために人工的に開発されており、意図通りの機能を発揮させるための原理や加工方法などの基礎研究が行われています。
より光る有機化合物を作るには?
発光性の有機化合物は世の中に普及しつつありますが、固体になると光りにくくなる点が課題です。発光性の有機色素は平たい板状の分子でできています。しかし板状の分子は重なると光が弱まってしまうのです。だからといって分子を板以外の形に変えると、そもそも光らなくなってしまいます。この問題を解決するために、重ならない構造を持つ板状分子の開発が進行中です。
例えば立体的に重なることのない構造で分子を配置する研究が行われています。複数の板状分子をプロペラ状に配置する実験では、重なっていた状態と比べて100倍ほど明るくなりました。実験で使われた発光色素はまだ実用化がされていないものなので製品化には時間がかかりますが、研究が進めばより発光の強い有機材料の開発に役立つと考えられています。
有機化合物をより使いやすくするために
分子をプロペラ状に配置するときには「超分子化学」の技術が使われています。超分子化学とは、分子をどのように並べれば機能を発揮できるのかを考える学問分野です。配置や組み合わせを工夫すれば、目的に応じた分子をデザインすることができます。このように有機化合物の開発には、化学や物理などさまざまな分野の知識が生かされます。
ほかにも、有機材料はセラミックスや金属などの無機材料に比べると寿命が短いことが課題となっています。有機化合物は酸素に弱いため、酸化して寿命が短くなってしまうのです。こうしたひとつひとつの弱点を研究で解決していけば、有機化合物はより機能的で使いやすい材料になり、社会で役立てることができるでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東海大学 理学部 化学科 准教授 池田 俊明 先生
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